エルフ、田舎者扱いを受ける
「魔王軍を知らないってどこの田舎者よ!」
さぁ? エルフの村がどこにあるかなんて今まで調べたことがないからわからないなぁ。
でも周りは木しかなかったから田舎といえば田舎な気がする。
サロメディスが怒鳴りながら地団駄を踏むたびに地面が凹む。
あんまり凹まされると草が生えにくくなるからやめてほしい。
しばらくして落ち着いたのかサロメディスは肩で息をしながらも長い紅髮をかきあげて大きく深呼吸をするように息を吸い込んで吐き出してブツブツ小さな声で呟いてた。
「大丈夫よサロメ、ここは田舎だから魔王軍も私の名前も届いていないだけよ。頑張れ私!」
なんか自分を励ましてるのをエルフの耳が拾っちゃった。
ここは知らないふりをしてあげるべきかな。
『なんか痛い奴じゃな。魔王軍とかもあやつのもうそうじゃないのか?』
「しぃ! 人には痛い言動をする時期というか病気があるってお父様が言ってたわ」
『ほう、人とはそんな病にかかるのか』
確か、ちゅーにびょう、とかいう名前の病だったかしら?
エルフ印の回復役でも治らない難病らしいし。時間経過で治るのを待つしかない病気だったかな?
『ちゅーにびょう』
『ちゅーにびょう?』
『いたいいたい』
何がおかしいのか精霊達はお腹を抱えて笑っていた。
「みんな笑うならバレないように静かに笑いなさい! あの痛い人に失礼よ!」
「お前が一番失礼だよ!」
精霊達に注意したらサロメディスに怒鳴られた。
なんで顔を赤くしながら私を睨んでるの? 私はどちらかというと味方だと思うんだけど……
「魔王軍幹部をバカにしたことを後悔させてやる!」
サロメディスのボロボロのローブがはためく。すると何かがこちらに向かい飛んできているのが分かった。とりあえず頭を下げて躱すと後ろの大樹に枝のような物が軽快な音と共に突き刺さった。
「これなに?」
『ほねかなー』
『くるよー』
気になって見ていると精霊の声が聞こえ、振り返るとすぐ側までサロメディスが来ていた。手には真っ白な剣みたいなのが握られてる。
速い。びっくりしながらもとりあえず他の木へと飛び移りながら風を放つ。
それもいとも簡単に躱される。だけど剣みたいなのの間合いからは逃げれた。
なんか攻撃が当たる気がしないなぁ。
「ソラウ何とかしてよ」
木に着地して契約しているソラウへと声をかけた。
『本気の風でやればよかろう?』
「あれ疲れるから嫌」
『面倒くさがりすぎじゃろ』
ソラウの言う本気の風、つまりは私の魔力の色に染めた翡翠の風の事だろうけど、あれは本当に疲れるんだ。魔力もかなり増えてはいるけどそんなに長く使えないし。
何より使った後は身体中が痛いし。
「逃げるだけかしら! ボーンジャベリン!」
サロメディスが剣を振るうと小さな白いのがいくつも飛んできた。
さっき精霊が言ってたけどこれ骨か!
絶対当たると刺さるやつだ。
『えんごー』
『まるやきだー』
ソラウは動かなかったけど他の精霊達は動いてくれた。
風が飛んできた骨を切り裂き、小さくなったのを炎が焼き尽くした。
「ち、精霊使いめ。なんて面倒なの!」
「あ、じゃあ帰っていただいても……」
「帰らないわよ! 世界樹を手に入れて魔王様に褒めてもらうんだから!」
また怒ってる……
それにしてもまた世界樹と勘違いしてるけど精霊樹って実はあまり認知されてないんじゃないかなぁ。