エルフ、尋ねる
「お、おのれぇ、この私にぃ」
「すごい、あれだけの魔法受けてまだ生きてる……」
多分、二十分くらいは続いた魔法の連射が終わり、もうもうと辺りが見えないほどに上がる煙を吹き飛ばすようにして出てきた人物を見て私は感心した。
すでにゾンビの群れは壊滅。ちらほら辺りに見えるのもいるけどあれくらいならほっといても魔獣が始末すると思う。
私と同じ判断をしたのかゾンビ狩りをしていた精霊達も私の周りに集結し、姿を現した人物へと視線を注いでいた。
私も興味津々でその人物を見ていた。
なにせ煤けたローブから見え、姿を現したのは蒼白い肌をしてるし、額からは立派な二本の角が生え、紅い長髪が溢れてる。
人間じゃない。かといって魔獣でもなさそうだし。
『ほう、魔族とは珍しい。いや、あれは進化して魔人になっとるのう』
「ソラウいたの?」
突然、後ろから声をかけられたので私は身体をビクつかせながら振り返るとソラウが興味深げな色を浮かべた瞳で魔人とやらを見ていた。
「魔人ってなに?」
『魔力の扱いに長けた者を魔族というんじゃが其奴ら総じて肌が蒼白い。そしてその魔族の中でも抜きん出た力を持つ者がたまにおってな。そういう奴らは角が生えとる。それが魔人じゃな』
ほほう、ということはあのお姉さんは魔人って奴なわけなんだね。
胸もなんか布巻いて抑えてるけど結構あるし。
フィズは女性に対しても差別せず攻撃したみたいだ。
「それにしてもソラウ、よくここがわかったね?」
『うむ、森でやたらと精霊達が騒いでおったからのう。狩りじゃーと叫んでおったし』
そんな物騒なことを叫んでいたのか君たち。
私が無言で精霊達を見ると彼らは視線を逸らした。
『それにやり返したいという奴を連れてきたのじゃが途中ではぐれてしもうてな』
「やり返したい奴?」
『うむ、まだ来ておらんがそいつに任せれば問題なかろう』
誰かあの魔人とかいう奴になにかされたの?
「このエルフごときがぁぁぁぁぁ!」
考えてたら魔人さんが起き上がって怒鳴っていた。尻尾を叩きつけたフィズもかなり驚いてる。
あの一撃は下手したら死んでてもおかしくない威力だったしね。私がお腹に受けたのなら上半身と下半身がサヨナラするレベルでついでにこの世からもサヨナラしそうな威力だったはずなのに。
それを受けて尚立ち上がるなんて……
「すっごい硬いんだね!」
『いや、単純に身体強化魔法でも使っとるんじゃろ』
「へー、すごいね!」
『……お主、身体強化魔法が何かわかっとらんじゃろ?』
身体を強くする魔法でしょ? それくらいわかるよ。使い方は知らないけどね。
「たかだかエルフごときが! 魔王軍、幹部のサロメディス様に楯突くとはいい度胸ね!」
「魔王軍?」
魔王軍ってなんだろ? 騎士団とは別物なのかな?
ソラウに視線を向けると知らないとばかりに顔を横に振っていた。
「すいません、どこの国の方でしょう?帝国ですか?」
わからないことはすぐに聞く。
じゃないと、いつまで経ってもわからないしね。
「な、魔王軍を帝国と同列にするなぁぁぁ!」
なんかサロメディスさん怒ってる?
足で地面を踏みつけるたびに地面が凹んでるけど……
何に怒ったんだろ?