精霊、はっちゃける
『やるぞー』
『『『おー』』』
精霊達の可愛らしい掛け声と共に彼らのかざした手から魔法の光が溢れ、次にその光は爆発する。
かざされた手から放たれた魔法は次々とゾンビの軍勢へと飛んでいき、吹き飛ばし始めた。
『いっぱいいるぞー』
『まだまだぁ』
ついでにクマの魔獣も吹き飛ばしてたけどその可愛らしい容姿とは違い精霊達は容赦はしない。
放たれる魔法は自然と共存しているはずの精霊がしたとは思えないくらいに容易く破壊していく。
森の一角を吹き飛ばしたことでわかったけどゾンビの数が尋常じゃない。
木々が折れて視界が広がるごとにゾンビが姿を現してるし。
「きゅぅー!」
私の肩に座ったままのフィズが口を大きく開き、蒼白い閃光を放ってゾンビを薙ぎ払っているけどそれでも減らない。
「数多すぎじゃないかなぁ?」
精霊とフィズが嬉々として魔法を叩き込んでいるのを見てるけどゾンビの数が全く減らない。
精霊達は楽しい事をしていると感じ取ったのか続々と集まって放たれている魔法の数は凄い事になっているのに減らない。
「こんな数の人間がゾンビになるなんて、どこかで何かあったとしか考えられないよ」
確か本で読んだ知識ではゾンビは長らく放置された死体が魔力にあてられて動き出すものって読んだ気がするけど、今吹き飛ばされているゾンビは肉体が腐り掛けてはいるけど全部が腐ってる風には見えないし、放置されてたような感じでもないしね。
『すーぱーせいれいびーむ!』
精霊さん達が何人か力を合わせてひときわ眩い魔法を使い横薙ぎに放つ。
太い線が地面を走り、僅かに時間を空けて火の壁が出来上がる。
吹き飛ばすではなく焼き尽くしてた。
熱線に触れたゾンビは跡形もなく消え去ってるし。
『いぇい』
ハイタッチをする精霊さん達、楽しそうだね? はっちゃけてるね。
「きゅうううぁぁぁぁぁ!」
一際甲高い声をあげたフィズになんとなく嫌な予感がした私は肩に乗るフィズの尻尾を鷲掴みにするとゾンビの群れに向かい放り投げた。
「きゅぅぅぅ⁉︎」
なんでそんな驚いたような声を出すかわからないけど明らかにヤバい気配がしてたし。
現にフィズの口の前には蒼い球体、竜魔法エレキキュールの輝きがあった。
放り投げられたことに驚いたらしいフィズはエレキキュールをゾンビの軍団を僅かに逸れた場所へと放ち、僅かなゾンビと森を軽々と消しとばす。
「きゅー!きゅー!」
フィズがまるで抗議をするかのように空を飛びながら私の髪に噛み付いてヨダレまみれにしてくる。
「いや、あんなの私の肩で撃たれたら私も吹き飛んじゃうじゃん」
あれだけの威力の竜魔法を私の肩を足場に放たれたらその衝撃で私の肩が下手したらもげる。
「それよりもフィズ。このゾンビの群れの中に違うのが混ざってない?」
「きゅー?」
私の鼻では全くわからないけど竜であるフィズなら分かるかと思ったんだけど、フィズは首を傾げてるだけだしわからないみたい。
『なんかいるよー?』
『ねー?』
「わかるの?」
魔法を乱発していた精霊達の何人かが飽きたみたいな様子で私の元へとやってきた。
『わかるよー』
『ねー、みたらわかるよねー?』
見たらわかる?
どれを見ても只のゾンビにしか見えないんだけど。
『だってほら』
『あそこで転がりまわってるし』
そう言って精霊達が指差した先には狙いを外したはずのフィズのエレキキュールが当たったらしく、蒼白い炎に包まれながら呻き声をあげるゾンビ達の中、
「あっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
悲鳴をあげながら転がりまわっている塊がいた。