エルフ、握り潰す
不気味な手紙を放置して動かしにくい体を慣らすような動かして三日。
ようやく以前と同じように体が動くようになった。やっぱり適度な運動というのは必要だね。もしくはいくら寝ても体がなまらないような寝具を探すしかないかもしれない。
精霊さんなら作れるかな?
『いるぜー』
『これかいりょうひん』
『じしんさくだよ』
『かいしんのでき』
精霊さんに寝具作りでも頼もうかと考えていると精霊さん達が二つの指輪を持ってきた。
一つは神々しい魔力を放つ白い指輪。もう一つはどす黒い魔力、というか禍々しい魔力を放つ指輪。あれ呪われてない? 触ったら死んじゃわない?
『いるぜぶきつかうさいのうないからね』
『ゆびわがたにしてみたんだ!』
『まりょくをながしたらぶきになるよ』
「才能がない……」
いや、確かに武器を使う才能は全くないんだけれど改めてそう言われると心に刺さるよ。
『しろいほうはせいれいじゅけんでくろいのはまおうのけんのほうね』
「これは、黒い方付けたら死んだりしない?」
見るからに魔力が禍々しいんだけど。
『くろいのからさきにつけたらしぬかも?』
『つけるときはしろいのつけてからくろいのつけてね』
『まりょくがちゅうわされるはずだから』
『はずすときはははんたいにくろいのからはずすようにね』
絶対呪われてるよね⁉︎
なんでそんなの作ったの!
というか黒いのから付けたらどうなるの⁉︎
『そんなことよりー』
「結構死活問題だよ⁉︎」
あっさりと重大な問題を流す精霊さん。
絶対私が死んでも事故で済ましそうだよね。
『てがみみないの』
「あー、なんか見たくないんだよね」
エルフ的直感が告げている。
絶対に碌なことが書かれていないと。
しかし、同時に早めに見ないとヤバイ、という直感もヒシヒシと感じるのだ。
つまりは結果的に碌でもなくヤバイことが起きるという勘が働いているわけだ。
「仕方ない」
嫌々ながらにテーブルの上の手紙の一つを手に取り封を切る。中から折り畳まれた紙片が一つ。そして書かれている一文目に眼を通した瞬間、私は音を立てて手紙を握りつぶした。
『え』
『なに?』
『なにがかいてあったの』
私がいきなり手紙を握りつぶした事に周りを飛び回っていた精霊さん達は驚きながらも興味深げに尋ねてくる。
しかし、今の私にはそれににこやかに対応するという配慮はない。
「ソラウ、緊急事態! すぐ来て!」
自分の中にある繋がりへと魔力を注ぎ込んでソラウを喚びつける。
すると瞬時に私の目の前の空間が歪み、ソラウが放り出されるように姿を現し、床へと落下した。
『な、なんじゃ⁉︎』
突然喚び出されたことに困惑しているソラウだけど悪いけどそれどころじゃない。
「妹が、ファルゼが来るわ!」
『なんじゃと!』
私の言いたいことがわかったかのようにソラウの目が大きく見開かれたのだった
。