エルフ、引く
『すごーい。よくわかったねぇ』
私が剣を突き刺した自分の影の口が笑みの形を取り陽気な声が響く。
「なんか魔力みたいなの感じたし、とりあえず攻撃してみた」
別に攻撃をしてくるような気配はなかったんだけど奇妙な魔力がずっとついてくるって気持ち悪いじゃん? しかもそれが姿もみえなくて気配だけするわけだし。
『あーたまたまだったのか。なら黙ってたらバレなかったかな?』
影が楽しげに笑い、私の影とは全く違う形へと姿を変えて私の前へと姿を現した。
『僕はフィオニキス。闇の大精霊フィオニキスだよ! ソラウちゃんの契約者だから見にきたんだけどなんか君とは僕と同じ空気を感じるよ』
真っ黒なローブでベールまで被って下面まで付けてるようなめちゃくちゃ怪しい大精霊と同じ空気って喜んでいいんだろうか?
いや、大精霊と同じと考えたらいいことなんだろうけど格好がなぁ。
『なんか失礼な事考えてない?』
「で? 大精霊が何の用?」
『だからソラウちゃんの契約者だから見にきたんだよ。あとは僕のおもちゃとやり合ったって聞いたからどんなのかと思ってね』
仮面越しなのに見られてるとわかるような視線をヒシヒシと感じるね。
なんか大精霊って変なのしかいないよね。精霊さん達も変わってるし。いや、そうなると精霊という生き物が変わったのしかいないのでは?
いや、それよりおもちゃ?
「おもちゃって何?」
『これだよこれ』
フィオニキスが私の前に何も無い手を翳す。その手を回すと何もなかったはずの指の間に赤い宝石のような物があった。
あれがおもちゃ?
『これは闇の宝玉といってね。持ち主が願いを叶えようと使うと凄い力を持ち主に与えるんだ。だけど持ち主が願いを叶えそうになったり、死にそうになると取り込んじゃうっていう僕のおもちゃなんだ! どうウケるでしょ?』
「趣味悪!」
死にそうになったら取り込まれる。これはまだいい。だってそのままだと死んじゃうわけだし。
でも願いが叶いそうになっても取り込まれるとかどっちにしろ絶望しかないじゃん。しかも希望がいきなり絶望に裏返るわけだよ?
うん、悪趣味すぎる! 軽く引くよ!
『そう? 闇の宝玉は願いの強さ、感情の力を吸収して代わりに力を与える物なんだよ? それに人間って願いが叶ったら燃え尽きちゃうでしょ? だったら願いを叶えるために猛進して最後のエネルギーを吸収しないと次から動かせなくなるじゃん』
「人を全力で弄んでるなぁ」
『まあ、人間なんて多少減っても百年くらい経てばすぐ増えるし?』
ここら辺が精霊と人とかの感性の差だよね。
大精霊は人が減っても特に気にしたりしないし。
なんか勝手に増えてるとか思ってそうだし。そして長寿のエルフ族もそうだけど精霊も時間の感覚がおかしいよね?
『そんな事よりね!僕は波長がなんか合う君を気に入っちゃってんだ! どう? 一緒に世界に混乱起こさない? もしくは滅ぼさない?』
なんか物騒な単語出てきたなぁ。