大精霊、即答される
『禁術、そう禁術レベルの再生なんじゃよなぁ』
我は口に出して嗤う。
禁術。文字通り世界では使う事を禁じられた術じゃ。
使う時罰せられるような術。
誰にかと言われると大精霊、拘束の大精霊テナールにである。
『奴が禁術レベルと認定すれば一発じゃな』
問題なのはテナールが認定するかどうかなのじゃがこれが難しい。
精霊とは大体が気まぐれな連中じゃ。その中でもテナールな奴は場を乱してそれを楽しむという愉快犯みたいな大精霊じゃからな。
我が苦しむ姿を見たいとかそんな理由で認定せんこともありえる。
じゃが、この再生能力を前に自前の精霊武器や、大精霊法案に引っかかるような力を使わずに吹き飛ばすのは中々に骨じゃ。
じゃが、拘束の大精霊であるテナールだけは違う。
奴は違反したものに対しては制限なく大精霊としての力を使うことができる。その分、通常時に使える力は著しく制限されてるらしいんじゃがな。
しかし、違反した者に対しての力は七大精霊の中では最強じゃろうな。
次々と飛んでくる触手を氷剣で切り裂きながら遠くにいる者へと連絡を取る魔法、コールでテナールへと連絡する。
このコールの魔法は人界では廃れた魔法らしいんじゃが精霊達は簡単に使える魔法じゃ。
あると便利じゃしな。
『はい、テナールっス』
『おお、テナール。実は頼みが……』
『自分は今、人間同士の戦争を見るのに忙しいっス。何か要件があれば発信音の後二秒以内に要件をどうぞっス。もしかしたら折り返すかもしれないっス。ぴー』
折角魔法で繋いだというのにふざけた返答が返ってきよった!
『まてい! コールの魔法なんじゃから直接繋がっとるはずじゃろが! あと二秒以内に要件が言えるわけないわ!』
『やだなぁ、パイセン。大精霊ジョークっスよ』
大声で怒鳴りつけると軽い口調でテナールが返答してきよった。
こいつ、やはりイラッとくるのう!
『で、何のようっスか? 自分、戦争見ながらお酒飲むのに忙しいっス』
『冗談ではなかったのか!』
人の不幸を肴に酒を飲みとは本当に性格悪いのう。
『まあ、いい。我の側には禁術レベルの再生能力を持つ化け物がおるんじゃが、な!』
迫ってくる触手を切り裂き、さらにお返しとばかりにアイスバレットを叩き込んで黒ドラゴンもどきを後ろへと下がらせる。
『んー? ああ、確かにパイセンの側にはいるっスね。凄いのがもぐもぐ』
我の周りを探ったのかテナールの奴が何かを食べながら答えてきよる。
『あー、この再生能力は確かに禁術レベルっス。これ人界では対処不可能なレベルっスよ』
『いや、おそらく子竜ならいけるかのう。あとイルゼも魔力さえあれば問題なさそうじゃが』
おそらくはフィズならば本来の力を出せば軽く消し飛ばせる。まあ、あれも契約者に最近似てきているからかめんどくさがりになってるんじゃが。
そして契約者であるイルゼも魔力さえあれば倒せるじゃろうな。
当然、我も本来の力を出せばデコピンで倒せる!
じゃが、本来の力を人界で出したら拘束されるからのう。
『そんなわけでテナール。お主の力でさっさと拘束して封印してしまってくれ』
『え、パイセンが苦しまないからやだっス』
即答されたんじゃが……
ついでにちょっと、ほんのちょっとだけ呆然とした隙に触手にぶん殴られて我は地面へと叩きつけられてめり込んだ。