精霊、復活する
イルゼ様がなけなしの魔力を込めた召喚陣が手の中で輝く。
いや、こんな死ぬような状況で寝ないで欲しいんですけど!
トロワと共にイルゼ様を引きずりながら城が崩壊して落ちてくる瓦礫から逃げます。
「アン、アン! これやばい気がする!」
「奇遇ですね、トロワ。私もやばいと思います!」
落ちてくる瓦礫なんかに当たれば普通のエルフである私達なら即死確定です。
エンシェントエルフで強固な体を持つイルゼ様だからこそ瓦礫を頭に直撃しても血を流すだけで済んでいるんです。
「城の崩壊があの巨大な怪物のせいで加速度的に早くなってます!」
「早く逃げないとやばい的な!」
トロワの意見には両手で賛成しますが、逃げる場所が思いつきません。
フィズ様もどこにいるかわからないですし、精霊達は外で暴れてる。
その手綱を握るはずのイルゼ様はというと死ぬかもしれない状況にありながら涎を垂らして寝始めていますし!
「どこに逃げたらいいのか……」
「とりあえず城から逃げないと!」
外には化け物みたいなのが暴れているわけなんですが、確かに城の中にいたらいつか瓦礫に潰されそうです。
いや、外に出る前に瓦礫による圧死のほうが可能性が高いです。
「これはイルゼ様の喚び出す方に任せるしかないのでは?」
未だ寝ているイルゼ様の手に描かれている召喚陣には回復する度に魔力が流れ込んでいっているみたいですし、まだ召喚には至らないのでしょうね。
おそらくイルゼ様が爆睡してるのも召喚できないのを無理矢理召喚しようとしているから魔力を片っ端から吸われているからかもしれません。
「とりあえずは逃げましょ……」
「そうだね⁉︎」
城の外に逃げるのを決定した矢先に頭上が騒がしいです。
上を見上げると天井がなくなっていました。さらには精霊達が飛び回っています。
ついでに黒い閃光も空を灼いてます。
あれがこっちに向かない事を祈るしかありません。
『あ、あんととろわ』
『そのへんあぶないよ?』
城の中を逃げ回っている私達に気付いたらしい精霊達が警告をしてくれます。いえ、それは分かっているんですけどね⁉︎
精霊達と化け物の攻撃により吹き飛んだ天井なわけですが、全部を吹き飛ばしたわけではないようで残った瓦礫が雨のように降ってきてますし⁉︎
「これ、死にますよね⁉︎」
「いやぁぁぁぁ!」
トロワの悲鳴が耳に響く中、落ちてくる瓦礫がゆっくりと見えています。
そんな中で引きずっているイルゼ様の手に描かれた召喚陣へと目をやると召喚するだけの魔力が溜まったからか青白く輝き、一気に魔力が噴き出しています。
吹き出した魔力が瞬時に凍りつき、瞬く間に広間を満たしていく。
満たされた魔力が崩壊する城を氷が覆い、崩壊を食い止めていっています。
『我、復活ぅぅぅぅぅぅぅ!』
イルゼ様の召喚陣から蒼いドレスを着たイルゼ様の契約精霊である大精霊ソラウ様が氷を撒き散らし、声を上げながら姿を現したのでした。