エルフ、遠のく
連載再開!
『さんかい、かくじこうげき』
『りょーかい』
「ちょっ」
私が隠れようとした場所から精霊さんが飛び出していく。
僅かばかりに回復した私の魔力を無理矢理徴収して。
いや、少しずつ回復してるんだけど全快には程遠いんだよね。
体調が上向きになりかけていたのがまた下降する。いや、だるい、ねむい、帰りたい。
魔力が少なくなった事で思考があまり良くないほうに動いてる気がする。
ああ、やっぱり寝よう。
隠れる途中で床に転がって寝る姿勢を取る。多分起きた頃には精霊さんが全部終わらせているに違いない。夢でも見て待とう。
「こんな所で寝ないでくださいイルゼ様!」
「魔法当たるよ?」
と思ったら両足を引っ張って扉の影から更に奥に引き摺り込まれた。
いや、痛い。地味に床と背中が擦れて痛い。ひりひりするよ。
「痛いんだけど?」
「魔法が当たった方が痛いでしょうが!」
「永眠する気?」
私の両足を一本ずつ持って引き摺っているアンとトロワに気怠げな目線を向ける。うん、痛いけど今は動きたくないなぁ。だってだるいし。でもこのままだと擦りおろされてしまう。
引き摺られながら移動してるし、でもねむい。
とか思っていたらさっきまで私が隠れて寝ようとしていた扉が黒ゴーシュによる一撃で吹き飛んでた。
あのまま寝てなら死んでた。いや、扉が破壊された拍子に瓦礫と化した一部が私の頭に直撃したから頭から結構な量の血が流れてクラクラする
「あー助かった」
「いや、頭から血を流してますよ⁉︎ 全然大丈夫に見えないですし、危機感なさすぎじゃありません⁉︎」
「もう少し危機感持とうよイルゼ様!」
アンとトロワはなんか凄く焦ってる。
いや、だるいんだよ。
魔力がないし、血も抜けていってるから瞼も重いんだよ。うつらうつらなんだよ。快眠の予感?
だからこのまま引き摺って移動させてくれると私は大変楽なのです。
「それに魔力がない今の私なら多分あんなの食らったら一撃で吹き飛ぶ気がする」
「「いや、イルゼ様なら生き残りそう」」
うん、二人の中の私のイメージが一体どんなものか知りたいものだけど、アンとトロワもあれ食らったら吹き飛ぶよね。
城も軽々と至る所が壊されてるし。
あと時々、精霊さんが吹き飛ばされてくる。
「レオンさんとか呼んでなんとかしてもらおう」
「なんでこんなやる気がないんですか! いつもより他力本願過ぎます!」
「いつもよりひどくない?」
やる気? 今は限りなく皆無です。
しんどいし。
「残りの魔力使ってなんか喚ぶー」
引き摺られながら頭から流れる血を指で拭い、手へと召喚陣を書いていく。
うん、結構な量の血がでてる。フラフラするし、いまいち頭が働かない。召喚陣を書いてるのは理解してるんだけどこれ、何を喚ぶ召喚陣なんだっけ?
「もう、だるい。喚ぶ」
引き摺られている間ちょっとだけ回復した魔力を掌へと書き終わった召喚陣へと流し込む。
ああ、もう寝たいよ。
「なんかきて。寝る」
「「雑すぎません⁉︎」」
私の僅かな魔力によって召喚陣が輝き、何かが姿を現す前に私の意識は遠のいたのだった。