前皇帝、叫ぶ
「ひぃぃぃぃぃくるなぁぁぁぁぁぁぁ!」
ゴーシュの無様な悲鳴と共に色取り取りの魔力が放たれた。
それはゴーシュを囲んでいたマーダーベアーに幾つもの直撃し、そしてボクのような素人目で見ても致命傷になるような傷を作り上げていた。
それはもうどれだけ魔力を注いだんだと聞きたくなるくらいだ。
一体のマーダーベアーは頭に当たって頭が吹き飛んだ。これは即死。
次のマーダーベアーは上半身と下半身が分かれるくらいの巨大な穴を体に開けられた。これも即死。
三体目のマーダーベアーはゴーシュの放った魔法では死ななかった。驚異的な勘でギリギリの所で避けたのだ。
しかし、ゴーシュの放った魔法が飛んだ位置が悪かった。狙いが外れた魔法はレオンの方へと飛んでいき、その魔法をレオンは素早く手にしていた聖剣で受け止め、魔法が効果を発揮する前に魔法が留まったままの聖剣をマーダーベアーに向けて振り切り魔法を切り返した。
結果、避けたはずの魔法が背後から奇襲をかけてくるという野生では絶対に体験できないような攻撃を受けてマーダーベアーは頭を消し飛ばされて絶命した。
「レオンも大概人外だよね?」
「バカ言うな。人外というのは今、帝国で骨のドラゴンや戦ってる精霊達のことを指すんだ。俺はまだ人内だ」
苦笑しながら言ってボクの言葉をレオンは真面目に返答してきた。
いやぁ、人であるボクからしたらあるレベルから上は全員人外だよ。
剣聖なんてみんな人辞めてるものだと思うよ?
精霊や大精霊、エンシェントエルフやエンシェントドラゴンなんて人外代表みたいなものだし?
つまりは帝国の上にいるのは大概が人外だよね。
「ゔぃぃぃぃぃぃぃ!」
「そんな大声出さなくても聞こえてるよ?」
血走った眼をボクへと向けながらゴーシュが叫ぶ。その怒りに呼応するかのようにゴーシュの杖が怪しく輝いているんだけど本人は気づいてる様子がない。
「ころしてやるぅぅぅぅぅ!」
「完璧に八つ当たりだよ」
マーダーベアーを喚び出したのはゴーシュだし、制御できなかったのもゴーシュだ。ボクが責められる言われはない。
むしろボクのほうが被害者と言える。いや、帝国の民が一番の被害者だ。
「お前の魔導具を売るなりして民に還元するとしよう」
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!」
怒る理由がわからない。
怒りに応えるようにゴーシュの足元から幾つもの岩の槍が飛び出てくてボクを狙ってきたけど素早く飛んでくる槍の前に出たレオンに切り払われる。
「邪魔jdするな@vtatw!」
うーん、なんかゴーシュの奴の言語が怪しくなってきてる。でも飛んでくる槍の勢いは増していく。
あと杖の輝きが嫌な感じ。
「レオン」
「気付いてる。あの杖というかあの宝石がやばい」
ボクと同じ事に気づいたらしいレオンと情報を共有しておく。
あの宝石が絶対にやばい。
「叩き斬ってよ」
「できればやってる」
今のレオンは両手の聖剣を振り回して飛んでくる槍を切り払ってる。
まあ、ボクを守るためってのもあるけど攻めるに攻めれないってのが大きい。
嫌な予感が膨らむ。
そんなボクの思いを組んだというべきか、ゴーシュの手にしている杖の宝石から黒い雫が音を立てながらこぼれ落ち、床を黒く染めていっていた。