エルフ、感じ取る
「で、ではこの世界樹はどうするつもりなのですか!」
「別にどうもしませんよ? 私はここに住んでいるわけですし」
なんでそんなにこの精霊樹をどうこうするのにこだわるんだろう?
魔力と精霊を生み出す樹だけど、それって存在するだけで価値があるものだってことも分かるけどさ、でっかい樹なわけだし動かせないんだからどうもしょうもないんだけど……
「ここには他のエルフも住んでるのですか?」
「私だけだよ」
何せ追放された側だし。
他に一緒にいるのってフィズとソラウと精霊達くらいだし。
「こんな場所にエルフの子供一人ってバカなのか⁉︎」
「初対面で人をバカにするなんて失礼な人ですね? あとよくエルフの子供ってよくわかったね」
「見たまんまだろ? まだまだ子供の身体だしな」
いや、確かにエルフの中では確かに子供ではあるんだけどそれでも百四十歳。人間の貴方と比べれば私の方が遥かに長生きなんですが……
まあ、子供みたいな体型というのは否定できないけどさ。
「ここは魔族ですら逃げ出すであろう魔獣達が暴れまわる場所、災害の森だぞ! お前の親はそんな所に子供一人を置いて何を考えてやがる!」
「あー」
いや、多分何も考えていないですよね。
なにせ即興で作った転移魔法を娘に掛けるような親ですし。
というか災害の森ですか。
どんな森かは知らなかったけどそんな恐ろしい名前の森だったとは……
転移された初日に私を追いかけてきた狼ももしかしたらヤバイ魔獣だったのかも。
でも森で過ごすようになってからも全く魔獣なんて姿を見せないし。
あ、精霊樹が近くにあるからかもしれないね。なにせ魔力を発生させるような樹なんだから魔獣を近づけないような力を出しててもおかしくない。
「ともかく! 私はここに一人で、いだぁ⁉︎」
「きゅう!」
一人でと言うとフィズがまるで自分を忘れるなと言わんばかりに蹴りをくれてきた。痛い、めちゃくちゃ痛い。
「フィズと……ソラウと精霊達と住んでるんです」
ソラウと精霊達と告げると精霊達は嬉しそうに羽ばたいてた。
ソラウは今はいないけど近くにいたら絶対に文句を言ってきたに決まってるし。
「それより貴方はなんなの?」
私からしたらいきなり現れたこの人の方がよくわからない。
武器とか腰に下げてるしめちゃくちゃ怖い。
エルフは不老ではあるけど不死じゃない。腕とか脚くらいなら切られてもエルフ印の秘薬があれば繋げれるけど、さすがに首を刎ねられたりしたら死んじゃうし。
フィズも鼻息を荒くして警戒はしてくれてるけどそれでも安心できないぃぃ。
たとえフィズの鱗が剣を軽々と防げる硬さだとしても何の拍子に私に飛んでくるかわかったもんじゃない!
『イルゼきずつけさせなーい』
『しゅーごー』
私の怖がった気配が精霊達に伝わったのか精霊達が形相を変えて私の前に集まると男の人を威嚇するように小さな体を光らせながら魔力を放ち始めた。
中には頭の上にすでに魔法を展開してる精霊もいたりする。
「こ、これは失礼した」
そんな精霊達の姿にビビったらしい男の人は私から離れるように後ろに下がり片膝をついた。
「俺たちはエナハルト帝国の騎士団だ。俺は第三騎士団の隊長を務めるレオンという」
なんだか厄介ごとの匂いがするよ!