皇帝、待ち構える
「きたね」
「ああ」
ボロボロになった城。
その王座に座るボク、ヴィンラント・エナハルトとその背後に控えていた剣聖レオンは待ち人が来たことを確認しあった。
現在の謁見の間にはボクとレオンの二人だけだ。
そして謁見の間の外に二つの気配。
他はさっき帝国内の至る所に突然現れたという魔獣の対処に全て当てている。もう一人ボクの護衛としていたテレサも動かさないといけないくらい人手が足りない。
それに全部で払っているのも仕方ない。護衛はレオンだけなわけなんだけどあんなバグエルフみたいな存在や伝説上の存在であるエンシェントドラゴンや大精霊が襲いかかってこない限りレオンならボクを守り切ってくれるだろう。多分!
さて、そんなバグエルフを除けば最強の護衛であるレオンと共に待つ待ち人とは当然、認めたくないけど父親であるゴーシュ・エナハルトだ。
過去何度も王位奪還失敗をやってきた無能な父親もどうやら今回は本気の本気らしい。
馬鹿げた戦力による奇襲。それに対してボクが取る行動。馬鹿だけどそれくらいは予想はできる父親は守りが薄くなるであろう城に乗り込んでくるんだろう。
多分、いつもの帝国なら成功しただろう。バグエルフがいなければ!
そんな予想をしながらため息をはく。その隣でレオンなんかは無言で聖剣を鞘から抜いてたりしてる。
ボクもそれを止めたりはしない。あれはさっさと斬って遺恨なく過ごしたいしね。
「いるのはわかってるから出てこい。出てこないと五秒以内に姿を現さないと首を刎ねる」
いや、どこにいるかボクにはわからないけどそんな簡単に姿を現すものなの?
そんなボクの心配は杞憂だったのか外にいたらしい二つの気配が慌てたように謁見の間に入ってきた。
あっさりと入ってきたことにボクは驚いた。いや、レオンの方を見ると彼も多少驚いているみたいだ。
そりゃ、襲撃しようとしてる奴が慌てて入ってくるなんて想像できないよね?
なんかあいつら見たことあるな。確かボクに反抗的な貴族じゃなかったっけ?
そんな中に入ってきた二人はというと慌てたように走ってきて王座に座るボクの前、そしておそらくはレオンの聖剣の間合いに入るギリギリというところでジャンプし、
「「軍門に降りますので処刑だけはご容赦くださぁぁぁぁぁぁぁぁい!」」
空中で華麗に土下座を決めて着地した後に床にヒビが入るくらいの勢いで頭を下げてきたのだった。