エルフ、口に突っ込まれる
とんでもない高さからとんでもない速度で敵に向かって落下してぶつかった。
言葉にすれば短いわけなんだけどこれによる私の体への物理的な衝撃は半端ない。
地面にぶつかる寸前に私の風の魔力で防御したといっても魔法も万能じゃない。今まさに私はそれを実感している。
「いたぁぁい、いたいよぉ!」
跡形もなくスケルトンドラゴンを吹き飛ばし、落下の衝撃で作り上げた巨大な穴の中心で私は身体中に感じる痛みに悲鳴を上げていた。
いや、声を出すだけでも体が痛い。少し身体を動かすだけでも昔、遊びで食らったフィズの雷の魔法ばりに激痛が走る。
『いるぜー?』
『いきてる?』
私が穴の中で激痛でのたうち回っていると心配したらしい精霊さん達がやってきた。
何気に安全を確保してから来たよね君達。人が痛みで苦しんでるのに!
「大丈夫じゃないですぅ」
『うーん』
『ぼくたちじゃちゆまほうはつかえないからなぁ』
『いるぜがぽーしょんとかもってるんじゃない?』
『さがすー』
「いたいいたいいたい! そこじゃないよ!」
精霊さんが体がまともに動かない私の代わりに服の中を弄ってポーションを探してくれるんだけど、変なとこ触ってるし体が動かされるたびにめちゃくちゃ痛い!
額に脂汗を流しながら耐えていると精霊さんがようやくポーションを発見。蓋を開けてもらってそれを飲ませてもらう。いや、本当に飲むだけで体が痛いよ。
死んでなければどんな傷でも治すエルフ印のポーションなわけだけど、今回の傷は結構ひどいからかすぐには治らない。一本だと少しばかり痛みが収まるくらいだ。
それでもゆっくりと痛みはあるけど体を動かせるくらいには回復した。
『いっぽんじゃたりなくない?』
『きずはふかいしねー』
『じゅっぽんくらいいっとく?』
痛みに顔をしかめながらも腕を動かしてポーションを取り出そうとした私の耳に不吉な言葉が入ってきた。
痛みに耐えながら喋っている精霊さん達の方へと視線を向ける。
するとそこには次々とポーションの蓋を開けていく精霊さんとゆうに十本以上の蓋の開いたポーションを持つ精霊さん達の姿があった。
そして感じる嫌な予感。
『『『これだけのめばなおるよね?』』』
「いや、その前に窒息しま……」
言葉を言い切る前に精霊さん達は私の口にポーションを突っ込んできたのだった。