精霊、投げる
「精霊さん達はやらないの?」
次々に飛んでくる黒い閃光を空飛ぶブーツの跳躍と移動によって躱しながら、いつもなら一番に喧嘩を売りにというかちょっかいを出しに行きそうな存在に声をかける。
『あいつあいしょうわるーい』
『しかもめたるだし』
『まほうはじいちゃうし』
どうやら精霊さん達とは相性が悪いらしい。
なんかある程度の魔法耐性があると途端に精霊さん達は相性が悪くなるよね。
魔法特化だから仕方がないのかもしれないけど。
さっきの黒い塊状態なら魔法は効果があったみたいだけど。
『あれにらくらくかてるのはじょういせいれいからだよ』
『ぼくらかいせいれいやちゅういせいれいでかつならかずのぼうりょくでいかないと』
そう言われたら精霊さん達が一人で戦ってる姿というのは見たことないかもしれない。
逆にイーリンスやソラウとかが精霊さん達に指示を出しながら戦ってる姿というのも見ないしね。
やっぱり上級からは力の差がかなりあるのか。
『だからかずのぼうりょくでならごぶごぶ?』
『にたいどうじはむりー』
『じゅうろうどうはいやだー』
『ろうどうかんきょうのかいぜん!』
「なるほど」
そうなると確実なのはイーリンスやソラウを喚び出すのが確実な勝利条件といえるかな。
でもソラウは精霊界に連行されてるし、イーリンスを喚び出すと下手したら一緒に契約しているイーリンスの心臓とも言えるログハウスごと召喚しかねない。
そんなのがスケルトンドラゴンの目の前に出現なんかしたら消しとばされて一体化しているイーリンスも同じように消しとばされかねない。
つまるところ攻撃の手段がないというわけだ。いや、あるにはあるんだけどね。精霊樹剣バージョン1.2が。
それに精霊さん達も魔法がメインなだけで別に魔法でしか攻撃ができないわけじゃない。
なにせ彼らにはお手製の精霊武器があるんだから。
『せいれいぶきでかずのぼうりょく』
『まほうがきかない? だったらなぐる』
『ける!』
『きる!』
『のばす!』
『なげる!』
『『『『さいよう!』』』』
精霊さん達が次々に武器を何処からか取り出しては構えている。当然の事だけど精霊武器だし、放ってる魔力もとんでもなかったりする。多分、人に当たったら消し飛んだりするんじゃないだろうか。
そんなとんでもなく危ない代物を精霊さん達は並んで構えているのだ。
まるで投擲するように。
『だいいっとう!』
『ふぁいやー!』
『せいれいせんたいしゅつどう!』
軽快な掛け声と共に幾多の精霊さん達が精霊武器は空へと放り投げ、人を消し飛ばすほどの魔力を帯びたそれは雨のようにスケルトンドラゴンの一体へと降り注いだのだった。




