エルフ、掛ける
泉に人がプカプカと浮かんでいる。
死んでる気がするけどあんまり確かめたくはないなぁ。近づいて急に動かれても嫌だけど、全く動かないのも嫌だ。
とりあえず! 泉に浮かんでる人達を引っ張りあげるとします。
精霊達が!
『おうぼうだー』
『さべつだー』
「この惨状を作ったのはあなた達なのよ! 責任を多少はとりなさいよ!」
強い口調でそう言うと多少は責任を感じていたのか精霊達は渋々といった様子だけど泉に浮かぶ人間を引っ張り上げ始めた。
引き上げ方は雑だったけど精霊達はせっせと動き、嫌々やってたのもやってると楽しくなってきたのかうるさくしながらもせっせと引き上げていく。
なんでも楽しめるのは良いことだよねー
そうして引き上げ始めて三十分ほどで全員が引き上げ終わっていた。
「きゅうきゅう!」
「フィズ許してよー」
その間ひたすらに謝罪の言葉を聞かないフィズに私は足を蹴られてた。フィズに怪我とかはないらしいけどいきなり上から人が降ってきてぶつかったことはすごく怖かったらしい。
結果だけでいうなら二十人の方が亡くなりました。
死因? 強いて言うなら首の骨が折れてたり運悪く浮かんでいたところに別の人が落下してきて圧迫死したりと色々です。あとフィズの上に落ちて地面より硬い竜の鱗で潰れちゃったり……
まあ、正直運がなかったですね!
人が死んだのは仕方がない。首や身体の一部が向いちゃいけない方に向いちゃってる死体があったりするけどそれはあまり見ない方向で。
生きてる人に関しては精霊達にしばらく見といてもらう。
人の生き死によりも大事なことがある!
「さすがにこんなに死体が浮かんでた水を飲んだり水浴びに使ったりしたくないなぁ」
そう、問題は水なんだよね。
さすがに死体が入ったり血が流れたりしてる水を飲みたくないし。
『きがきれいにしてくれるよ?』
「そう言う問題じゃないのよ」
精霊樹にそんな浄化機能があったことにも驚きです。
ですが問題はそこではないの。浄化されて綺麗になっているとしてもそこは別問題なのです。
言うならば虫の入ったスープの虫を目の前で取り除いて美味しく飲めるか? というようなものなのです。
「一回、中の水を全部捨てて火魔法で泉跡を焼いてからじゃないと安心できません」
『じゃ、みずぬく?』
「そうですね。時間は掛かりますがまずは水を抜くことからよ」
結構な量がありますから泉の水を抜くにはかなりの時間が掛かるだろうね。
『ぬいてー』
どうやって水を抜こうかと考えていると精霊が間の抜けた声を上げた。
まるで何かに頼むかのように。
「何を言ってるんで⁉︎」
誰に言ってるのかを精霊に聞こうと思ったその時、泉の水がドンドン減っていってる⁉︎
別に泉の底に穴が空いてるとかそんな訳ではなく言葉通り、水が勝手に減っていってる!
「これどうやってるの⁉︎」
『これって?』
「水が勝手に減ってることです!」
周りで魔力が動いてるような気配は感じられない。となると何かしらの力が働いていると考えるのが普通だよね。
『きにぬいてもらったのー』
きって精霊樹の事かな?
泉だった場所を覗き込めば確かに泉の底の方に木の根らしきものが見えるし。あれってもしかしたら精霊樹の根なのかしら?
魔力や精霊も生み出すし水まで抜けるなんて精霊樹、なんて万能なんでしょ。
『これであとはみずためるだけだよー』
「そうですね。精霊樹もありがとうございます」
お礼を言うと心なしか精霊樹の葉が嬉しそうに揺れた気がします。
泉の水はソラウなり精霊達に氷か水を出して貰えば大丈夫だし。
「あ、そうだ。私の作ったポーション持ってきてそこの人たちに掛けといて」
「あいさー」
精霊達は軽い返事をするとログハウスに向かって飛んで行った。
ポーション掛けてれば多分死なないよね?