エルフ、回収する
『まあ、いるぜがふつうのえるふかどうかはおいておこう』
『そうだね』
『いぎなし』
置いとかれた!
『それでいるぜ、あれどうする?』
そう言いながら精霊樹剣さんが指差したのはすでに息も絶え絶えなヘテルベル。
大きかった体がも魔力とか闘気とかを根こそぎ精霊樹剣に吸い尽くされたのか枯れ木みたいに細くなってるし。
あれ、こづいたら死ぬんじゃないかな?
そんなヘテルベルだけどまだ精霊樹剣を手にしたまま私の方を睨みつけてた。
あのまま持ってても死ぬと思うんだけどね。色々と吸われてる訳だし。死にかけに睨まれても怖くもなんともないし。
「そのままじゃ死ぬんじゃない?」
『つまりしぬまでまつと?』
『いがいといんしつ』
いや、だって死にかけのくせに近づいたら殺すぞ! みたいな目で私の方を見てきてる訳だし?
だったら時間が多少掛かっても放っておいて死んでもらったほうが誰も苦労しなくて済む訳じゃない?
きっとさほど時間も掛からないと思うし。
『ならぼくたちがとどめを』
『いまならまほうのいっせいほうかで』
『ちりひとつのこさない』
「儂としてはこやつの身柄は預かりたいところなんじゃがのう」
『『『こたえはのー!』』』
精霊さん達の魔力が昂ってる。ヘテルベルの近くにいたおじいちゃんも精霊さん達の魔力が高まっていることに気付いたようで説得を諦めたのか被害を受けないようにするためかヘテルベルから少しずつ距離を取ってた。
うん、この子達なら私が頷いた瞬間に本当にやりそうだ。
『うーん、よくねたー』
精霊さん達が死にかけのヘテルベルに魔法で攻撃を仕掛けようとワクワクしている中、私の頭の上で堂々と昼寝をしていた精霊さんの一人が目を覚ました。
なんて羨ましい生活だろう。私も早く寝て起きて微睡んでという生活を送りたい。
あ、黒騎士回収しとかないと。
まだ暴れてるような感じがしたけど手元に意識を集中させると魔王の剣が私の手の中に姿を表した。
うん、簡単に回収できたね。
『ねーいるぜ?』
「なんです?」
私が魔王の剣を腰へと下げていると欠伸をしながら頭の上の精霊さんが眠たげに声をかけてきます。
なんかイケイケ系の精霊さんの中にもこんなのんびりしたタイプの精霊がいるのが意外すぎるんだけど。
『あれ、死んでない?』
「『『『『え?』』』』」
眠たそうな精霊さんが指差した先にいたのは死にかけのヘテルベル。だったのですが精霊さん達と話している間に彼は力尽きて倒れていたのでした。
意外とさっくりと後腐れなく死んだね。
あ、これで寝具探しに集中できる。
そう考えたのを見越したかのようにアジト全体が音を巨大な音を立てながら振動し始めたのだった。
「な、何事⁉︎」
『てっしゅう!』
私の質問に答える前に精霊さん達は我先にと逃げ出したのでした。