子竜、弾く
「は、なんだこの剣! これがあれば最強じゃねえか!」
興奮したような声を上げてながらヘテルベルは私から奪った精霊樹剣を眺めていた。
まあ、空間切れるし? 防御の仕方も今のところわからないような武器だしね? 多分だけど私みたいな武器を使うのが素人じゃなくてそれなりに使える人が持つだけで最強ぽくなるよね?
『それいるぜせんようだよー?』
『りょうさんきがもっていいものじゃないんだよー』
『すくないまりょくでいきがるなよー』
精霊樹剣を手にして悦に入っているヘテルベルに向かって精霊さん達が少しばかりイラついた様子で武器や魔法を発動できるような状態で飛び交い攻撃を仕掛ける。
そんな精霊さん達が迫る中、ヘテルベルはというと薄く笑い、精霊樹剣を鞘から抜き放ち、真っ黒な刀身を晒してきます。
ん、精霊樹剣の刃って魔力で作られてるから透明で見えないはずだよね? 私が使うと刃見えないし。
ヘテルベルの構える精霊樹剣を見ながら疑問を浮かべる私を他所に精霊さんがヘテルベルと突撃する。
しかし、一応はなんでも切れると精霊さんが名言しているだけあるのか飛んでくる透明な攻撃を躱すのに必死で乱雑に放たれた魔法はヘテルベルの手にある精霊樹剣から放たれる見えない両断されて攻撃をするまでは至ってない。
まあ、避けるのは悲鳴というか楽しそうに叫んでるだけだから余裕そうだけど。
それはおじいちゃんも同じようで攻撃を仕掛けようとはしているものの、ヘテルベルが精霊樹剣を振るうたびに大きく距離を取るため攻め手に欠けてるみたい。
ただし、こちらは精霊さん達とは違って攻撃を避ける時は真剣な表情だ。
「ほっほっほ、これは厄介ですな」
私からしたら見えない斬撃を躱してるおじいちゃんや精霊さん達がおかしいんだけど……
ちなみに私はというと一回目のヘテルベルの攻撃以降は避けてすらいない。
何故か私の頭の上に戻ってきたフィズが攻撃が飛んでくるたびに魔力を纏って輝いている尻尾を鞭のように振るっては飛んでくる攻撃を吹き飛ばしているからね。
精霊さんがなんでも切れると言ってたからフィズの尻尾も切れたのかと思って焦ったんだけどフィズの尻尾には傷一つついてなかったんだよね。いや、余裕からなのか欠伸までしてる。
謎すぎるよ、竜の身体。
というかヘテルベルの奴、私より精霊樹剣使うの上手いよね? 初めて使うくせに見えない斬撃を楽々と使ってるし。
『むむ、』
『いるぜがつかってないとはいえ、ふぃずのからだに傷一つつかないなんて』
『あれもしっぱいさくかなぁ』
フィズが尻尾を振るだけで攻撃を弾いているのを見た精霊さん達が次々とボヤいてる。
それよりも気になること言ってましたね。
「イルゼが使ってないとはいえ、ってどういう意味?」
『ん?』
『言葉通りだけど』
未だに精霊さん、ヘテルベル、おじいちゃんの人外と言えるような戦闘が続いているわけなんですが、こちらに飛んでくる攻撃はフィズが吹き飛ばしてくれてるので、私は安心して周りにいる精霊さんと会話を続けます。
『あのけんはいるぜせんようだよ?』
『あんなおにがつかったくらいじゃひゃくぱーせんとのちからはひきだせないよ』
『だからやいばもいろついてるでしょ?』
「でもヘテルベルは使ってますけど?」
私が指差した先にはおじいちゃんに向かって笑いながら精霊樹剣を振り回すヘテルベルの姿があります。
『つかえるけどー』
『だいしょうがいるからねー』
「代償?」
そうそうと頷く精霊さんの姿を見て私は非常に嫌な予感を覚えます。
代償を払うような剣を私に使わせてたんですか⁉︎
精霊さんの言葉に私は顔を青ざめさしたのだった。