精霊、共に笑う
「着いたの?」
「きゅー」
いつの間にか私の肩から頭の上へと移動したフィズをつれてドリルが突き刺さっている場所へとたどり着いた、
どうやらすでにドリルは止まっているらしく、甲高い音は聞こえない。
それよりも気になるのは……
「なんでドリルの後ろにドアがついてるんだろ?」
「きゅー?」
ドアは開け放たれてるし、向こう側にはドリルの先端があるはずだけどそこも開いてる。
それにしても開け放たれたドアかは流れてくる魔力と気配は誰のだろう?
なんかどっかで感じたことがある気がするんだけど…… どこだっけな?
『いるぜー』
『おにいたよー』
「そうですか」
ドリルの先端から抜けた先にいた精霊さん達が楽しそうに手を振りながらこっちを見ているので少しばかり早足で近づいていく。そうして気配のするほうに視線を向ける。
そこにいたのは何故か腕を吹き飛ばしたはずなのにしっかり両腕があるヘテルベルと両手に剣を持っているおじいちゃんの姿があった。
あ、あの人あれだ。ヴィと話をした時にいた確かレオンと一緒にいた四人の剣聖とかいうのの一人だ。
それにしても手に持ってる剣から漂う気配、あれ絶対精霊さんが作った武器だよね? 森で作っていた侵入者に噛みつく家具と同じ気配がする。
『あ、あれは』
『しっぱいさくだー』
『あのじいちゃんがもってたのかー』
「変な機能つけてないよね?」
精霊さんもおじいちゃんが持っている剣に気づいたみたいだ。
やっぱり君たちの作品なんだね。
なんか呪いの武器とかじゃないよね? 精霊さん達なら命を代償に強化するとかのとんでも機能を付けていてもおかしくないからね。
『ただのほのおとこおりのけんだよ?』
『まりょくはつかうけどそれくらいふつうでしょ?』
『でもしっぱいさくだし』
『あとじばくする』
まぁ、たしかにそれくらいなら普通なのかな?
それでも強い人が持てばかなり強い武器になるよね?
あのおじいちゃんも剣聖なわけなんだからあんな物持ったらどうなんの?
あと自爆って武器につける機能なの?
『とうなんぼうしてきな?』
「なるほど」
なら仕方ない。
「ほっほっほ、これはハイエルフ殿に精霊さんたち。ご機嫌はいかがかな?」
「まぁ、ぼちぼちです。あとハイエルフじゃないです」
『ぼちぼちでんなー』
『もうかりまっかー』
『あばれられるならごきげんです』
「ほっほっほ、儂もこの新しい魔剣を振るえて幸せですのぅ」
『「ははははははははは」』
おじいちゃんと精霊さん達はご機嫌そうに共に笑い合ってる。
暴れたり剣振るっているだけで幸せとかだらけたり寝るのが大好きな私からしたら考えられないよね。
今もついさっき精霊さん達に魔力を吸われたから体が重いし若干眠いんだけど欠伸を噛みしめながらもナイフを取り出して放り投げた。
「で、ヘテルベルはなんで腕が生えてるの? さっきまで腕なかったよね?」
「ちっ、易々と逃がしてくれないわな」
こそこそと逃げようとしていたヘテルベルの足元にクルクルと回転したナイフが突き刺さってヘテルベルは嫌そうな顔をしながら私のほうを見てきたのだった。