精霊、ほる
「まだ?」
『もーちょい』
『まだ、たりなーい』
結構な時間が経過したので精霊さん達に尋ねてみたのですがまだのようです。
異界のダンジョンとも言っていい銀の滴のアジト。その廊下に座り込んでいる私の体の至る所に精霊さんが腰を掛けて座っていました。
あれです。
鳥が休むために木に止まるような感じです。
鳥と違うのは魔力がガンガン吸われていってることですかね? 一人一人は大した魔力を吸われてはいないんですけど数がそれなりなので凄い勢いで魔力が減ってます。
「なんか眠たくなってきた」
「きゅー」
魔力が一気に無くなったことによる倦怠感からくる眠気に私とやる事がなくて暇なフィズは揃って欠伸を噛み締める。
そんな状態がしばらく続き、うつらうつらし始めた頃、ようやく精霊さん達が私から離れた。
『よし、たまった』
『いっきにいこう』
『よぶんにすったからしばらくはよゆう』
『いそがないと、なんかむこうにいる!』
余分に吸われてたのか。体が気怠すぎて動きたく無いんだけど。もう寝てていいかな?
「寝てていい?」
『そうなるといるぜがさがしてるしんぐもいっしょにふきとびそうだけど?』
「さあ! 頑張って探そうか!」
寝具を吹き飛ばすなんてとんでもない事は許さないから!
『それじゃあいくよー』
『くうかんこてい!』
周りに魔力を精霊さん達がばら撒く。
ただそれだけの行為なのになんだか周りが型にはまったような感覚がある。
空間固定というのがこれなのかな?
『からのー』
『くうかんへんい!』
『きょうかすこっぷによるあなほりー』
次にどこから取り出した精霊さんサイズの小さなスコップを手にした精霊さん達が壁に向かって振り下ろすとまるで抵抗がないかのように突き刺さった。
え、ここ異空間だよね?
『よし!』
『いける!』
『さくさくー』
スコップが壁に問題なく刺さることを確認した精霊さん達はイェーイとハイタッチをしている。
「それで? スコップで掘るの?」
それなら壁が脆くてもかなりの時間がかかりそうだけど…… 精霊さん達は数がそれなりにいるから物量で押す感じかな。
すると精霊さん達はあからさまに残念な物を見るような目で私を見てきた。
『いるぜー』
『そんなひこうりつてきなことしないよ』
『つかれるじゃない』
いや、まあ確かにそうだけど。
精霊さんだし。スコップ持ってたし。
『すこっぷはかべがちゃんともろくなってるかのかくにんよう』
『だからほんかくてきにみちをつくるのはこれー』
精霊さん達が円を描くように床へと着地すると床へと手を置く。
そしてどうやら魔力を流し込んでいるようだ。
精霊さん達の作る円の中心に巨大な鉄の塊が作られていた。
「これなに?」
『いせかいでじめんほるのにつかうやつだって』
『ろぼっとかについてるらしいよ』
『どりるっていうの』
『こんどからみてぃにもつけるんだよ』
「ほほう、ドリル」
『これならそらうさまのこおりもけずれるはず』
先端は尖っていて周りには溝が掘られてる。これを壁に押しつけて回転さして穴を掘るんでしょうね。
またカラミティが物騒になる予感しかしない。
そして何故か対ソラウ対策の装備みたいになってるし。
『あとはこれをかぜまほうでうごかす!』
精霊さん達の魔法によって巨大ドリルが動き、先端が壁へと突き刺さり、魔力が込められ始めたのか甲高い音を立てながらゆっくりと回り始め、壁に穴を開け始めていた。
『やった!』
『せいこうだ!』
『せいれいはおおきないっぽをふみだしたんだ!』
うん、なんか涙流してる精霊さんとかもいるけどそんな、感動するようなものなの?
私が首を傾げながら肩に止まるフィズを見るとフィズも理解できないのか首を傾げていた。
『じゃ、これからは』
「ゆっくり速度上げてく感じ?」
なんか試作ぽいし、大事に行くんだろうなぁ。時間かかりそう。
『え、ぜんかいだけど?』
「え?」
大事をとってゆっくりじゃないの? と疑問を口に出す前に精霊さんに魔力を注ぎ込まれたらしいドリルはただでさえ甲高かった音がさらに凄まじい騒音となり、回転数も凄いことになってるし!
『どりるー』
『ばーすとー!』
止めと言わんばかりに精霊さん達がドリルの後ろから風魔法を撃ちまくり始めた。
その風魔法に押された結果、ドリルは凄まじい速度で壁を掘り進め、すでに私の視界内に見えないところまで進んでいった。
「あれどこまで掘るの?」
姿が見えなくなったドリルというかドリルが作り上げた道を指差して精霊さんへと尋ねる。
適当な場所まで掘られても困るんだけど…… 一応は異空間だし。穴空けまくって大丈夫なのかなぁ?
『ちゃんとへてるべるおいかけてるよー』
『まりょくかんちもつけといた』
「……無駄にハイスペックだね」
「きゅい」
我先にと言わんばかりに精霊さん達がドリルが作り上げた穴へと突撃していくのを見ながら私はため息をついてその後ろを付いていくのだった。