エルフ、びっくりする
蹂躙。
まさしく目の前に広がるのはこの言葉が相応しいと思う。
なにせ黒騎士の咆哮の効果によって全く身動きが取れない連中に向かって黒騎士は容赦なく背中のバカでかい剣を引き抜くと振り回す。
一回振るだけで大体首が三つくらいスポーンと飛んでいく。
この世界、なんて命が軽い世界なんだろ。
人がゴミのようだよ!
『いや、いるぜもあっさりやってるよ?』
『かがいしゃがわだからね?』
「……」
なんかジト目で精霊さん達にみられたし。
私は自分から攻撃を加えた記憶は一切ないけどね。正当防衛を主張したい。
今現在殺ってるのは黒騎士です!って。
あ、でも黒騎士って呼ぶのも変だよね?
なんか青黒いし。どことなくソラウの魔力も混ざってるみたいだしなぁ。ソラウがなかんかしたのかな? なぜか武器を返してきたのもソラウだったし大いにあり得る。あと喋るようになってるし。
いっその事こと名前をつけた方が楽かもしれない。後で考えよう。それまでは黒騎士でいいか。
『ぼくらのえものがなくなる!』
『とつげきだぁ!』
黒騎士が暴れ回るのを見ていた精霊さんが慌てたように魔法の乱射を開始する。
あ、黒騎士の背中にも当たってる! でも黒騎士は微塵も怯まない。
というか精霊さんは仲間に当てても全く動揺したりしてない。
「な、なんなんだあいつら!」
「仲間に当てても平然と魔法撃ってくるぞ」
むしろ敵側が動揺してた。
私も味方を味方と思わない精霊さん達にびっくりだよ。
そんな事なんて関係ないと言わんばかりに精霊さん達の放つ魔法は過激さを増す。
禁止していた炎系の魔法も使い出してるし。
そして魔法が乱射されて空間に魔力が満ちてきたせいなのか心なしか異空間が所々歪んでいるような気がしないでもない。というか絶対に歪んでる。
魔力が溜まりすぎると良くないことが起こるって聞いたことがあるけどこれのことか。爆発したりしないよね?
あとこれ、私が精霊樹剣を使うとまずいよね? あれ、空間切る武器だし。異空間にいるのに空間を斬ったらどうなるんだろう? 下手したら異空間が消えたりする? それも知らないから怖いし。
一瞬、握っていた精霊樹剣の柄から手を離しながら私はため息を一つ吐いた。
「精霊さん、黒騎士、手早く制圧してね。そろそろヴィが動き出しそうだし」
『はーい』
『まかせてぇ』
『ギョイ二』
全く信頼できない返事を聞きながら、私は枕と布団、無事だったらいいのになーと他人事のように考えるのだった。