エルフ、剥がす
『むー』
『おかしー』
『たべる?』
『おかしじゃない!』
なんか精霊さん達が可愛らしいやりとりをしてるけど私の関心はそこにはないんだよね。私は精霊さん達が飛び回っている場所へと足を運ぶ。
確かに私は怪しい連中が姿を消すのを見た。
それを同じように見ていた精霊さん達も魔法を放った。
普通なら隠れてる連中もろとも吹き飛ばしてもおかしくない威力の魔法を叩き込まれていたわけだけど周りには血や肉が飛び散ったような跡や何も壊れたような様子は全く見られない。
「よくわからないなぁ」
感覚的には何かがある。それはわかる。
でも何があるかが全くわからない。
精霊さん達の様子を見る限りも何かがあるのは確実なわけなんだけど。
めんどくさい。
あんまり時間をかけると私達を監視してる人達がヴィに連絡して余計なことが起こりそうな気がするし。
つまるところ時間がない。
「仕方ない」
ため息を一つ吐き出して覚悟を決める。
疲れるからやりたくないんだけどなぁ。
私は体に自然に流れて循環している魔力を意識して瞳へと集める。
エルフの瞳はよく見える眼なわけだけど、そこにさらに魔力を流し込むことでよりよく見えるようになる。
ただ、この方法はとても目が痛い。
ただでさえよく見える眼を魔力によってさらに強制的に見えるようにするわけだしね。瞳には凄く負荷が掛かる。
昔、強化した目で村で一番高い木の上から村の外を見てた時は魔力を多く注ぎ込みすぎたからか瞳から血が吹き出して半年くらい目が見えなくなったしね。
「んー」
瞳に魔力を込めて怪しい連中が姿を消した場所を見る。
普通に見た時には気づかなかったけど、魔力を集めた目ならわかる。
なんか布みたいなのがヒラヒラと揺れてる。多分魔力で作られてるんだろうね。
「精霊さん達には見えないの?」
精霊さんは魔力で構成されているような存在だから余計に気付く気がするんだけど……
『うーん』
『ぼくら、まりょくでからだつくってるから』
『かくされたまりょくとかはきづきにくいのー』
『でっかいまりょくならわかるけどねー』
詰まるところ大雑把にしかわからないってことだ。
納得したところで未だ視界で揺れるヒラヒラとした布のような物へと手を伸ばし、掴む。
「ま、とりあえず中に入ってから考えよう」
掴んだ魔力の布を私は一切の容赦なく力一杯引っぺがした。
ベリベリという子気味いい音と共にさしたる抵抗も無く魔力の布は剥がれ、その中にいたであろう先ほど姿を消した方々と目が合った。
後ろには明らかに外とは違う空間が見える。
凄く驚いている様子の怪しい連中に私はニッコリと音がなるようは笑みを見せ、
「こんにちは」
「え、あ……」
挨拶の返事を待つことなく、風の魔力の中へと放り込んでやった。