精霊、回す
「更地になったね」
『まっさら』
『なんにもないねー』
私は自分の魔法で目の前に作り上げ惨状を見ながらしみじみと呟いた。
いや、確かに魔法使ったけどこんな簡単に更地になるなんて思ってなかったよ。
私の作り出した竜巻は銀の滴の拠点を軽々と吹き飛ばし、更には周りの土地も削って天高くに吹き飛ばした。
ここまでは良かったんだよ。
「どうしよう、壁も削れちゃったよ」
問題は竜巻がそのまま突き進んで帝都を囲むようにして作っていた壁も削り取って行った事なんだよね。
この壁って帝都の外から魔獣が入らないようにしてるやつだよね? 潰したままにしてたらまずいのかな?
でもここはアヴェイロンの森に接してないから大丈夫なのか判断がつかないな。
「ま、ほっとこ」
『てきとうすぎない⁉︎』
「私の魔法にいきなり壁を作るなんてものはないし」
私の得意な風の魔法で出来る事ならともかく、壁を作るなんてていうのは土の魔法が得意じゃないと無理だし。
土の魔法は相性が悪いのかうまく使えないんだよね。
あ、精霊さんに魔力を渡してやって貰うなら問題ないんだけどね。
「魔力渡すから直してもらっていい?」
『いじっていい?』
「ちゃんと壁の役目を果たすならね。あと空から振ってくる瓦礫なんとかして」
雨みたいに振ってくる瓦礫を風で吹き飛ばしながら答える。地味に面倒だしね。細かい魔法は精霊さんの方が得意だろうし。
私がやったらまた何かを吹き飛ばしかねないし。
それなのに精霊さんがキラキラした目で見てくる。
うん、君達遊ぶ気満々だよね。
許可を出すと楽しそうな声を出しながら空に向かって魔法を連射して瓦礫を吹き飛ばしながら穴の開いた壁に向かって飛んでいった。
「さて、あとは地下への入り口を探すだけなんだけど」
『まっさらでわからないねー』
まあ、綺麗に吹き飛んだしね?
でも死体とかもないし、やっぱり上の建物はダミーだったんだろう。
いや、もしかしたら生きてるのも空高くに吹き飛ばしたかもしれないからいつか落ちてくるかも。
「地下に立て篭ってるとしてもどっかに空気穴とかあるはずなんだけど」
空気がなかったら死ぬしね。
その穴がわかれば私の風で中がわかるんだけど。
異空間ならわからないけど。
『どっかにあなあけてみずながしこむ』
『にげみちなくできしー』
『くるしむよー』
……前から思ってたけど精霊さんは残酷だよね。
ケラケラ笑ってるし。
「中の物が気になるからだめ」
『えー』
『つまらなーい』
布団があるかもしれないのに水攻めなんて論外だよ。
びちゃびちゃの寝具とか嫌だしね。
「でも、精霊さんが言うように穴を開けるのはアリだね」
『でしょー!』
『ぼくらもやりたーい』
周りを飛ぶ精霊さん達が立候補するように手を上げてくる。
いや、やってくれるなら楽だけどね。私も魔力を使わなくていいし。
やる気になってくれてる精霊さん達を放っておいて後ろを振り返る。
カジノを出た後くらいからまた視線を感じ始めた。多分、ヴィあたりに私の監視を命じられてる人達だろう。まあ、風の魔法が使える私にはなんとなく場所がわかるんだけど。
「邪魔しないでね」
風の魔力を使って声を届けておく。邪魔されたら面倒だしね。
『すーぱーどりる!』
『つちなんてさくさくー』
『これをからみてぃのつぎのぶそうにしよう』
『いぎなーし』
なんかしばらく目を離している隙に精霊さん達は金属の輝きを放つ円錐を宙に作り出していた。
しかもやたらとトゲトゲしてるのが付いてるし。
『かいてんかいてーん』
『すべてをえぐるー』
その円錐に魔力を込めたのかゆっくりとした速度で回り始めたそれは徐々にスピードを上げていき、甲高い音を立て始めてる。
み、耳が痛い!
そしてまた魔力で動かしたのか尖っている方を地面へと向けると、
『いぐにっしょん!』
凄まじい勢いで地面に向かって落下して行ったのだった。