エルフ、振り切る
「普通の建物だね」
『つまんなーい』
『きたいはずれー』
カジノで一番偉い男、確かザッハードだっけ? そいつを締め上げもとい、お話をした私は銀の滴の本部を友好的に吐かせ……喋ってもらいました。
場所は帝国首都の外れも外れ。
周りにはたまに建物が建っているくらだし、見える建物自体もボロボロのが多い場所だ。
まあ、関係ないけど。周りに人の気配というか生き物の気配がないのは私にとっては色々と好都合だしね。
「やはり、暴力じゃなくて会話で済むならそれがいいよね」
『かいわ?』
『くびすじにぶきをつきつけるのがかいわ?』
『つめにまいくらいはいだよね?』
……会話です。
なぜならエルフ印のポーションのおかげでザッハードさんの体には傷一つないんだから。傷はあったんですけど元に戻ったので体には傷一つありません。
心の傷? それは自分で治してください。
まあ、それはいいです。
問題なのは目の前にある建物、というか普通の家が銀の滴の本拠地かどうかが私には判断がつかないということなんだけどね。
『さすがにあれだけなきさけんでたからほんとうだとおもうよ?』
「人って嘘つきだから。もし本拠地じゃなかったら今度戻って足か腕の一本くらいは捥いでもいいかもしれない」
『ゆびはもいだよね?』
どうせエルフ印のポーションで治るし。なんなら三本に増やしてもいいし。
『いるぜのたまにでるそのなぞのこうどうりょくはなに……』
『しんぐってそんなにだいじー?』
「大事です」
そりゃ精霊さん達には理解できないと思うけどね。
君達は寝る時は空飛びながら寝てるし。寝具いらずだし。
快適なぐーたららいふ、略してぐーたらいふのためには良い睡眠は必要不可欠!
あれ? でも最近全然ぐーたらしてない気がする。
『それでどうするの?』
『でてくるのまつ?』
「そんな気長にやる気はないよ」
目の前にある建物は素人の目から見ても本部というには小さすぎる。
となると、
「多分、地下に広がってる感じかな」
『うーん』
『わかんない』
『したでなんかうごいてるかんじはするー』
『ちかかいくうかんてきな?』
つまりは下に何かあるということ。
大事なものは流石に出入りがある上には置いてないと思うし……
「じゃ、吹き飛ばします」
『『『え?』』』
右手の掌を建物に向かって伸ばす。
そこに風を集めて、さらに自分の魔力の翡翠色の風を混ぜ込んでいく。
掌の上にあった風は初めは拳大くらいの大きさだった旋風が今は巨大な竜巻くらいの大きさになってる。
これはそこそこの威力がでるけど異空間なら大丈夫だよね?
『いるぜ! それやばいよ!』
『なにするきかなんとなくわかるけどやめたほうが……』
「いやです」
精霊さん達が私にしがみつくようにして止めてくるけど私はやめる気はない。
そんな精霊さん達の静止を振り切って私は手の中にある竜巻を解き放った。
そして、
帝国の一部が更地と化した。