エルフ、付いていく
「じゃ、人目のつかないとこに行きましょうか」
なんか面倒になりそうな予感しかしない。ついでに精霊さんが暴れる予感もひしひしと伝わってきてる。
そんな緊迫した空気なんてわからないであろう目の前の男は私が諦めたと思ったのか怒っていた表情を一変させて下品な笑みを浮かべてる。
「は、わかればいいんだよ。ついてきな」
くるっと背中を向けて歩き出した男に私はついていく。一応は人目につかない所というのは考慮してくれるみたい。
周りにいた人も明らかに良くない空気に気付いたのか近づいてこないし。
「あ、換金したのは後で取りに来るのでちゃんとしててね」
「わ、わかりました」
うやむやにされても嫌だから一応言っておく。
別に唯の話し合いならここで聞いてもいいんだけど、こんなとこで精霊さんが暴れでもしたら怪我人が大量発生してしまうしね。
『ひとけのないとことは』
『こうつごー』
『くらがりにはいったら……』
精霊さん達が物騒な発言をしながら私の周りを飛んでますがスルーしとこう。
とりあえずは建物ごと破壊するなんていう物騒な手は使う気がないようだから多少は安心したよ。
でも目の前を歩いてる男の寿命はそんなに残されてないような気がする。
目的地に着いたら背後から精霊さんに襲われるんじゃないかな?
男について煌びやかなカジノの裏側、装飾品や飾りなどがない廊下を歩く。
なんかよからぬ事をしてる感じがするなぁ。
なんか廊下の端に綺麗にしたんだろうけど紅い点があったり、拭ったようなというか掃除した跡が見れるし。
掃除し忘れてるのか指とか目玉みたいなのも転がってるんだけど……
多分、私が気付いてるから精霊さん達も気付いてると思う。
その証拠になんかどの武器使う? みたいな会話が聞こえてくるし。
あとさりげなく私にも武器を勧めてくるのはやめてほしい。
でもそのボタンを押すと刃が飛び出すナイフはちょっと気になるから後で借りよう。
やがて飾りっ気も何もない扉を開けて中に入ると男は立ち止まる。
そうなると必然的について歩いていた私も止まるしかない。
中は薄暗いけどエルフの目なら昼間と同じくらいに見える。どうやら倉庫みたいだけど、こんな所で『話し合い』をするなんて言って誰が信じるんだろう?
「よし、ここらでいいだろ」
小さく男が呟いたら私が部屋に入ってくる時に使った背後の扉が大きな音を立てて閉まった。ご丁寧に鍵まで。
そして振り返った男の手元には小さな筒のような物が握られていて、それは私に向けられていた。握られていた筒のような物から爆発音が響いた。