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精霊樹のエルフは働かない  作者: るーるー
帝国混乱編
195/429

皇帝、集める



「緊急事態だ」


 帝国王城の会議室。

 そこで椅子に座りながらボク、ヴィンラントは重い空気の中言葉を吐いた。

 会議室にいるのは帝国最強の騎士団を束ねる四人の団長、そして宰相や文官といった帝国の実務を担う人ばかりだ。

 普段行う会議ならボクはわざわざ出たりしないし。最終決定権はボクにあるけどその前にあらかた決まるようになってるからだ。

 そういう意味ではこれだけ帝国のトップが集まるというのは異例と言ってもいい。いつもなら何人かは欠席をしたりしてるしね。


「陛下、緊急事態とは?」

「宰相、銀の滴だよ」

「銀の滴ですか? 今帝国を騒がせている?」

「うん。それが問題なんだ」

「それが緊急事態なのかしら?」


 うん、テレサの言いたいことはわかるよ。

 これは正確ではない。

 正直な話、銀の滴は問題ない。たかだか盗賊。巷で名を轟かせている盗賊団。まあ、とある事情から面倒な盗賊団なわけだが騎士団を本気で動かせばすぐに潰すことができるだろう。

 その程度で治るような物事なんだから銀の滴は緊急事態にすら入らない。

 それにイルゼには銀の滴に関しての情報がない、わからないと言ったけどそれなりに情報は集まってる。それでもその情報を渡してイルゼに銀の滴を今潰されると非常に困るんだ。


「銀の滴は問題ない。これはみんなの共通意見ということはわかってる。問題なのはそれを目の敵にしているイルゼのほう。そして精霊達からもたらされたお土産だよ」


 精霊という単語を聞いて席につくヤークウッドが身体を震わせているのが目に入ったけど無視する。あれは自業自得だし。

 精霊達との戦闘という名の教育の賜物だね。


「なぜイルゼが銀の滴を目の敵にするんだ? 帝国に来て間もないし、関わる要素がないだろ?」


 うん、レオンの言うことはもっともだよ。


「イルゼに紹介した店、どうも気に入った物が銀の滴に盗られていたらしいんだ」

「よりににもよってかよ」


 レオンが頭を抱えてる。うん、ボクも頭を抱えたいよ。でも問題はそこだけじゃない。


「知っての通りだけど銀の滴はクソ親父……んん! 前皇帝陛下の子飼いの部隊だ。他にもクーデターを起こしたい貴族が色々と絡んでる盗賊だから証拠を固めて捕縛したい」


 共通認識であるかを確認するために部屋の中にいる面々を一瞥していくと皆が頷いていた。

 銀の滴自体は問題ない。後ろについてる貴族連中が面倒なだけなんだよなぁ。

 クソ親父が絡んでるから尚のことだよ。


「だからイルゼには潰されたくない。潰されると証拠もなく消し飛ばれそうだしね。だから今は忍をフル稼働で動かしてる。二、三日で動くからそのつもりでいてね」


 イルゼとの約束を破るとイルゼの事だから本当に帝国を端から潰して行きかねない。ただのエルフが言ったのであれば笑い話で済むだろうけど相手は最強とも言えるエンシェントエルフなわけだし。さらには国を簡単に潰すだけの力を持ってる竜に精霊達まで一緒にいるからたちが悪い。


「了解しました陛下。ですが他の問題というのは一体?」

「どこかのバカ貴族がイルゼさんに喧嘩でも売りまして?」


 騎士団の中で最高齢でかつ最強の剣聖であるジェフ爺ことジェフ・ビレビオットが尋ね、テレサが茶化してくる。

 いや、貴族が余計なことをするだけならどれだけ良かったか。


「貴族がバカなら潰せばいいだけじゃん。でもこれはそういかないんだよ……」


 ボクが合図をすることで側に控えていた文官が鞘に入った状態の二振りの剣をテーブルの上へと置く。


「陛下これはなんですかのう?」


 さすがジェフ爺気づいたみたいだね。

 顔色悪いし。いや、団長四人はみんな気付いたようだ。戦闘を生業にしてない宰相や文官達は気付いてないみたいだけど。

 このテーブルの上に置かれている武器がヤバい代物だということが。


「これは精霊達から貰った武器だ。ボクは騎士じゃないし武器には詳しくない。でも、これがヤバい代物って事くらいはわかる」

「おそらくはレオンの扱う聖剣に匹敵する剣でしょうな」


 ジェフ爺がテーブルの上に置かれた剣へと手を伸ばし、一本を掴むと流れるような動作で鞘から剣を引き抜く。

 抜き放たれた刃は薄青い光をぼんやりと放っていた。


「この剣ならばなんでも両断できるじゃろな」

「爺さんなら普通の剣でもなんでも斬れるだろが」

「わかっとらんのぅ。あれは技術で斬っとるんじゃ。じゃがこの剣を使えば技術なんていらんじゃろうな。この剣に触れれば抵抗なく両断じゃ」


 眼福眼福と言いながらジェフ爺は刃を鞘へと収めて剣をテーブルの上へと戻した。


「それで陛下、この剣はどうされたので?」

「……貰った」

「は?」

「精霊達から失敗作だからあげるとか言われて昨日貰ったんだ」


 ボクの言葉にその場にいる全員が間抜けな顔をしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] イルゼさんも精霊さんも怖すぎ。
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