エルフ、迫る
「ヴィ!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
サイトウさんの所でメガ睡眠掛け布団だけは貰った私は空飛ぶブーツで空を駆けながらお城へと急いで戻り、ヴィのいる部屋の窓のガラスを叩き割りながら中へと入った。
何故窓から入ったと聞かれたら、急いで帰ってきたからとしか言いようがない。
私個人の力では空を飛ぶなんてことはできないけど空飛ぶブーツの力を借りれば空くらい飛べるわけだし。
それに今の私はかつてないくらいにやる気に満ち溢れてる。
銀の滴、絶対潰す。
勝手に部屋の中に入った私に少し遅れて外にいたヴィに付いていたであろう騎士の人達が中に入ってきたけど私を確認すると戸惑ったような動きをしてる。
「し、心臓に悪いから窓から飛び込んでこないでくれないかな⁉︎」
椅子から転げ落ちたヴィは他の人に支えて起こしてもらいながら大声を上げる。
「ヴィが転けたのは私のせいじゃないし。そんなことより!」
「いや、確実に君のせいだからね?」
些細な問題をくどくどとしつこいですね。
器がちっちゃい。
「銀の滴とかいう盗賊団が何処にいるか教えてください」
「銀の滴って今帝国で有名な盗賊団だっけ?」
「その通りです陛下。少なくない貴族、商人から非公式にですが被害届が出されています」
ヴィがこめかみを抑えながら思い出そうとしていると近くにいた文官さんが答えてた。
その返答を聞いてヴィはああ、そういえばそんなのがあったねと手を叩いて思い出したようだった。
「なんでイルゼがその銀の滴とやらを気にかけてるのさ?」
「私の欲しかったものを先に奪ったからです!」
「はぁ?」
どうやらヴィには私の思いは届いていないようだ。
『なんかいるぜのほしかったしんぐをねー』
『ぎんのしずくってとこがとっちゃったんだって』
「そういえば家具屋のサイトウも被害者だったね」
サイトウさんが被害者なら何故動かないの⁉︎ あんな寝心地の良さそうな寝具を作れる人なのに!
やっぱり私が動くしかないようですね。
「だから情報ください」
「と言ってもねぇ。まだ調査中だしまともな情報なんてないよ? 精々帝国内に拠点があるってくらいだし」
今まで何してたんですか? この皇帝。
民が苦しんでるのに知らんぷりですか? だったら私が代わりにやってやりますよ。
簡単に見つけてやります。そして徹底的に潰してやりますよ。
「帝国を端から吹き飛ばしていけば燻り出せますね……」
精霊さん達と一緒に帝国を囲むようにして魔法で攻撃していって真ん中に向けて追いやるようにしていけば捕まるでしょう。
帝国内にいるみたいですし。
「忍! 今から忍達を総動員して情報集めさせるから二、三日待って!」
私がボソっと呟いた言葉にヴィは一瞬で顔色を悪くすると何やら何処からか現れた真っ黒な服を着込んだ人たちに指示を出し始めていました。
まあ、少しくらい待ってあげましょう。まともな情報がなければ吹き飛ばしていけばいいだけですからね。
うふふふふふふ。
『なんかあばれれそうだね』
『いろいろじゅんびしとこ』
精霊さん達も準備をするようですね。
さあ、待ってなさい! 銀の滴!