エルフ、怒る
「まあ、アイリス様については今はいいじゃろ」
「そうだね……」
大精霊が関わる案件には私は自分から関わりたいとは思わないよ。
だって面倒だし。
だから関わりたくないんだよ。
ソラウだけでも面倒だし。
「それでお主の要望の家具というか寝具じゃが」
「そう、それだよ!」
私が待ち望んでたのはそれだよ!
よく寝れる快眠グッズ! それを手に入れるのが目的で帝国に来たんだからね。
「よく寝れるというと儂が作ったメガ睡眠掛け布団じゃな」
「おお!」
ゲートに手を突っ込んでサイトウさんが取り出したのは美しい刺繍が施された布団だった。
渡されたのでそれを震える両手で受け取るとうっとりするくらいに肌触りがいい。これは寝れる。よく寝れるぞ!
『いるぜのてんしょんあがってる』
『まりょくたかぶってる』
「何がこやつをここまで昂らせとるんじゃ?」
『いるぜ、ねるのすきだから』
『いちばんすきだよねー』
なんだか大変馬鹿にされてる気がします。
睡眠は大事なんですよ? 人生の大半は寝ていると言っても間違いではないんですから。
その睡眠の質をより良いものにしようとするのは全く間違いじゃないはずです。
「なにか問題が?」
「い、いや何もないのう」
『こ、こわい』
『もれてるまりょくがまじだよぉ』
『ちびりそう』
なんかビビられてます?
みんな睡眠の重要性がわかっていないようですね。
これは精霊さん達を対象に講義を開いて睡眠の重要性について説かなくてはいけないかもしれないね。
「で、でだ。そのメガ睡眠掛け布団とセットにメガ睡眠マクラとメガ睡眠敷き布団があっるんじゃがな……」
「それも買います。お金に糸目はつけません」
なにせヴィが全部払ってくれますしね。
私はお金のことは一切気にせずに買い物ができるらしいです。
最悪、力尽くで奪ってもいいわけだし。
「それなんじゃが……メガ睡眠マクラとメガ睡眠敷き布団は盗まれたんじゃよ」
「なんですって……?」
サイトウさんが済まなそうに言った言葉を聞いた私の顔は絶望に染まっていただろう。
「外に干してる間にのう。マクラと敷き布団、それに店の家具もいくつか盗まれたんじゃ」
「どこのどいつです! 私の寝具を盗んだのは!」
「た、多分じゃが最近帝国内で暴れとる盗賊団の銀の滴の連中じゃないかのう」
私が詰め寄ったからかサイトウさんは慌てたように答えてくれます。
銀の滴…… 私の快適睡眠生活を邪魔するなんて許すまじ!
絶対に私の寝具を取り返さなくちゃ!
『いるぜのじゃないよね?』
『しぃ!』
『なんかやるきだからおもしろそうだしほっとこう』
許すまじ!