エルフ、回る
連載再開
『うわー』
『ひとがいっぱーい』
ヴィと話をして、精霊さん達がヤークウッドにトラウマを植えつけるくらいにボコボコにしてただ同然の素材で作れるエルフ印の薬を高値で売り付けて数日後、私と精霊さん達は帝国の街に来ていた。
アン、トロワの二名には自由に行動していいと伝えておいた。いつも精霊さん達の相手をしてたらしんどいだろうしたまには休まないとね。
フィズはというと私の頭の上に器用に座っていた。
なんか最近体を小さくする方法を覚えたみたいで今は子猫くらいの大きさになってる。
なぜか私の頭の上がお気に入りらしい。
本当はその日にすぐ寝具を買いに行きたかったんだけど、なんかヴィに街にいろいろ話をしとかないといけないからすぐに行けないと言われたしね。
別になにかやらかすつもりはないんだけど。
「手を出してきた輩はぶっ飛ばしていいよ」
と凄くいい笑顔でヴィが言ってたけど私はそこまで好戦的ではない。どちらかというと静かに過ごしたいし、騒がしいのもあまり好きじゃない。
「というか耳が痛い」
街の至る所でお客さんを呼び込むためにお店の人が大きな声を出しています。
エルフの耳はよく聞こえる良い耳ですからこの街の活気のある雑踏は地味に辛い。
いや、活気のある事はいい事なんだけどね。
『いるぜ、あれ! あれきになる』
『おいしそー』
『あのおもちゃなにー』
私の周りにいる精霊さん達も非常に落ち着きがない。
あっちにふらふら、こっちにふらふら。気がつけば姿がなかったりしてる。
まあ、精霊さんは子供みたいなものですし、今まであまり人間の世界には干渉してこなかったようですから目に付くものが珍しいんでしょうね。
そう言う私も興奮してます。耳は痛いけど。
エルフの村はこんなに大人数いませんし、そもそも店というものが存在してなかったし。
視線を巡らせるだけでどこにでもお店があるのが帝国みたい。エルフの村は基本的に自給自足。なんだったら食事をしなくても生きていけるのがエルフですから店なんて構える必要はなかったわけだし。
「見てなにか飛んでるわ」
「小人?」
「あの耳、エルフか? でも髪の色が……」
「頭の上にいるのってまさかドラゴンか? いや、ドラゴンがあんな小さいわけないか」
そして私達、凄く目立ってます。
周りを飛び回ってる精霊さん達は勿論、私までなぜか目立ってる。
やたらとじろじろと視線を向けられる。
精霊さん達にその視線を向けるのはわかる。だって小さいし、空飛んでるし。
でも私はエルフなんだけど? アンとかトロワとかも帝国にいたんだから別に珍しいわけじゃないと思う。髪の色が違うくらいだし。
村ではこの金の髪も翡翠色の瞳も当たり前だったんだけどなぁ。
「とりあえず寝具を見に行こう! あ、精霊さん達も自由行動ね。気に入らないからってぶっ飛ばしたりしちゃダメだよ?」
『『『はーい』』』
『かぐしょくにん!』
『ぼくたちもさんこうにしなくちゃ』
わたしが力強く宣言するとわかってるのかわかってないのかよくわからない元気な返事をした精霊さん達が自由に飛び回り始めた。
逆に家具に興味があるらしい精霊さん達は私の元に残り、ヴィに聞いた家具屋さんに向けて移動を開始したのだった。