エルフ、囁かれる
「なんで避けれるかなぁ?」
「だめだ、この人おかしい!」
落下しながらピンクの女性がめちゃくちゃに鎌をぶん回してくる!
私は体のあちこちから風の魔力を放出して繰り出される鎌の攻撃を躱してるけどこんなの長く続かないよ⁉︎
私が躱せているのは優れたエルフの眼で攻撃の瞬間がわかるからそれに合わせてるわけだけど!
あと風を出すたびに体が変な方向に向くから痛いし。
「腰に剣を二振りも下げてるのにどうして抜かないの?」
「使えないので!」
剣なんて縦か横にしか振れないし!
あとどんな効果があるかわからないものそんな簡単に使えるわけないんだけど⁉︎
というか使ったら危ないのはそっち側なのに。
『つかっても』
『いいんじゃよ?』
悪魔の囁き!
精霊さんは使ってほしいんだろうけどさ!
風で上から下へ自分を押すようにして落下速度を上げて大振りを躱して床へと着地。落下の衝撃で脚が痺れるしかなり痛い。
「イルゼ?」
名前を呼ばれた気がしたのでそちらを見ると王座に座ったヴィの姿が目に入ります。が、そんなに長くは見てられないんですよ!
痺れる脚を無理やり動かしてその場を跳ぶと私がいた場所へとピンクさんが鎌を振り下ろして床を粉砕。
なんか壊した床の破片が黒い服やキラキラした服の人に当たって倒れてるけど大丈夫なんだろうか?
「ふぅー、私からこんなに逃げれるなんてあなたで五人目よ」
「多いのか少ないのかわからない数ですね!」
あんな鎌当たったら死ぬ!
鎌が髪をかすめて何本か切り裂かれてるし。
「テレサ、彼女は……」
「陛下、今この女の首を差し上げますので」
「あー、もう好きにしていいよ」
テレサという女性はヴィの部下ぽいんだけど話を聞かないタイプみたいだ。
あとヴィ! 諦めるの早すぎない⁉︎ 自分の部下くらい手綱を握っていてほしいんですけど⁉︎
なんか敵認定うけてるから面倒な事この上ない。
しかもヴィの奴、周りにいた黒ローブが全員倒れてるからって余裕の鑑賞モードだし。凄い楽しそうじゃん。
「さあ、首をはねてやるわ」
「ぶ、物騒すぎる」
鎌を構えたテレサさんが好戦的な笑みを浮かべて私を見てくるのはやめてほしい。
あと周りを気付かない間に騎士とかが私とテレサを囲むようにしてる。
まるで逃さないように……
ため息を吐きながら私は腰に下げる精霊樹剣を引き抜いて仕方なしに構え、正面で鎌を構えるテレサさんへと笑みを浮かべる。
どんな効果が出るかわからないけど余計な事をしてきたのはそちら側なんだから多少は痛い目にあってもらっても問題ないよね?