エルフ、追いかける
「あ、あなた様がアヴェイロンのエルフ様で間違い無いでしょうか?」
「そうだけど」
ワイバーンに乗ってる騎士がなんか震えながら聞いてきたから答えた。なんか乗ってるワイバーンも震えてるし。
なんでそんなに怖がってるの?
あ、私の手にまだソラカロンがあるからか。そりゃ山を吹き飛ばすような武器を持ってたら怖いよね。
とりあえずはソラカロンを腰のベルトへと差し込むように戻す。
手になにも持ってなかったら流石に怖く無いよね?
「きゅうぅぅ」
私の肩に乗ってるフィズはめちゃくちゃワイバーンに威嚇してるけど。
なんかワイバーン達も心なしが凄く居心地が悪そうだからやめてあげてほしいけどフィズは聞いてくれないだろうしなぁ。
「こ、此度は帝国にいかな要件でしょうか?」
「ん? なんかヴィの奴が遊びに来ていいよって手紙がきたから来たんだよ?」
一応、イーリンスに持たされていたヴィからの手紙を取り出して騎士さんに手渡す。
騎士さんはというと震える手で受け取ると「拝見します」と小さく呟き手紙を開いてた。なんか一つ一つの動作が綺麗だよね。震えてるけど。
人間って大変だよね。
何か一つの動きをとるのにも確認とか求められるんだもん。
上に立つのがしっかりしないと絶対上手くいかないよね。そういう意味ではヴィってすごく優秀なのかな?
「……拝見しました。確かに陛下の文字です」
騎士さんが持っていた手紙を私へと返してきます。
「ではこれから帝国へ向かうということでよろしいでしょうか?」
「うん、いまいち場所が分からないから案内してくれると助かるな。あと攻撃してごめんね?」
先制攻撃はこちらからやっちゃった訳だし一応謝っとこう。
あれ、でもよく考えたら地上から攻撃され始めたのが最初の攻撃だから私から先に仕掛けた訳じゃないよね?
「いえ、こちらも確認が遅くなり申し訳ありません」
おお、仲間が一人消し飛んだのに大人の対応だ。
これがもしエルフだったらみんな武器を持って報復に行きかねないんだけど。
やっぱり人間は文明的な気がする。
「それでは帝国へと案内させて頂きます」
「お願いします」
『うむ、くるしゅうないぞ』
『よきにはからえ』
なんで君たちはそんなに偉そうなのかな? ま、いっか。
ワイバーン達へと先導してもらいながら移動を開始しようとしていると背後から凄い速度で迫ってくる魔力を感じとった。
敵意みたいなのは感じないからゆっくりと振り返る。
「敵襲か!」
少し遅れつつ気づいたらしい騎士の皆さんが武器を構えて振り返ります。
そんな風に緊迫した空気などをぶち壊すかのように魔力の塊は私達の横を通り過ぎて行きました。
一瞬の事でしたけど、私のエルフ耳は聞き逃しませんよ?
『なんかみんなとまってる?』
『ぼくたちがぶっちぎりだぁぁぁぁぁ!』
『まけたらばつげーむ?』
私達の横を通り過ぎていったのは空飛ぶ絨毯の使い方をマスターしたらしい精霊さん達でした。
「負けるわけにはいかない! あの王城ってどっちですか⁉︎」
あまりに一瞬だったので呆然としていましたがこのまま負けて罰ゲームなんてごめんです!
「あ、ああ、このまままっすぐだが……」
「ありがとう! フィズ、精霊さん、負けませんよ!」
「きゅー!」
『まけなーい』
騎士さんに聞くやいなや私達も全力で空を駆けて前をいく精霊さんを追いかけていくのでした。
◇
「おい、どうするんだ?」
「……とりあえず報告しとけ。エルフと精霊とドラゴンが空飛んでるけど攻撃するなって」