精霊、振る
ああ、うん。
やりすぎたかな?
手にしたソラカロンを振り抜いた姿勢のままで固まっていた私はその硬直が解けると頬を掻きながらそう考えた。
いやだって、目の前の敵が消えるなんて想像してなかったんだよ。
というかなにが起こったのか私、全然わからないんだけど。
『いるぜー』
『やりすぎ』
『やまきえたね』
「え?」
なぜか、精霊さん達が呆れたようなというには凄く楽しげにニコニコしながら私に近づいてきてます。
その顔はまさに『計画通り!』といった表情です。
「……騙しましたね?」
『なんのこと?』
『ぼくたちうそついてないよ?』
『しうんてんだからまりょくはちょっとにしときなよーっていっただけなのに』
まるで悪びれてない様子で言いますね。
このソラカロンの試し撃ちをしなかった私にも問題はあったかもしれませんが、使ったからこそわかります。あれは少しの魔力で起動するような魔導具ではないという事に。
そして普通に考えればそんな事は作った精霊さん達が気づかないわけがないのです。
なにせソラカロンを振るう前に遠くに見えた山。その上の部分が綺麗に無くなってるんですから。
確かにそれなりの魔力は込めましたが、放たれた距離の山を吹き飛ばす程の威力とは……
そりゃ目の前にいたワイバーンなんて消し飛びますよね。
見るとフィズや精霊さん達と戦っていたワイバーンが警戒するように距離を取り始めているみたい。それを見たフィズと精霊さん達も私の方へと戻ってきてるようだし、今なら会話ができるかもしれない。
「はぁ、精霊さん。とりあえず話がしたいのでコレを振りながらあの人達に会いに行ってください」
『これはぁ?』
「お話したいという合図です」
そう言って精霊さんに渡したのは白いハンカチです。確か人間の間では話し合いがしたいとかの意味があったはずです。
「振り回して行きながら話がしたいと大きな声を出しながら行くんですよ?」
『わかったぁ!』
『まかせてー』
私からハンカチを受け取った精霊さん達が新しい遊びを見つけたかのように飛び出していきます。
「きゅうきゅう!」
「なんかイラついてるのはわかりますけど今は我慢してね」
抗議するように私の身体に頭を擦り付けてくるフィズを撫でながら私は苦笑します。
なぜかわかりませんがフィズは昔から他のドラゴンが私に近づくのを嫌がるんだよね。
ダンジョンコアの力で生み出したドラゴンとかも私に絶対近づけないし。
理由はよくわからないけど。
『いるぜー』
『おはなしってなにするの?』
精霊さん達はというと一通り暴れて満足したのか、お話の内容が気になってるみたい。
「これ以上攻撃され続けるのも面倒だからあのワイバーンが帝国からなら一緒に行ったら攻撃とかされないから楽でしょ?」
『なるほどー』
『あったまいい』
いや、本来ならフィズが飛び出したりしなかったら話をしたかったんだけどね。
いきなり攻撃するなんて想像してなかったし。
『いるぜー』
『なんかむこうもはなしがしたいってー』
『とりあえずどげざさす?』
なんでそんな上からなんでしょう?
苦笑しながらも私は精霊さんとフィズを引き連れて空中で停滞しているワイバーン達へと向かって近づいていくのでした。