子竜、攻撃する
『いるぜー』
『なんかきたよ』
「何がです?」
最初のうちは凄まじい数の魔法が飛んできていたけど空飛ぶ絨毯からブーツに変えた私を捉えることはできなかった。それどころかそれなりにデカい魔法だけ蹴り返していたらいつの間にか魔法が飛んでくる数は減り、今では全く魔法が飛んでくる気配もなくなった。
そんな矢先に精霊さん達からのなんかきた発言。
なんだろう? と疑問を持ちながら目を凝らすようにして前方を見ていると小さな点が見えた。何あれ? 迎撃部隊かな?
「きゅぅぅぅぅぅ!」
私が考えていると私の横を飛んでいたフィズが口から咆哮と共に巨大な眩い閃光、竜魔法のエレキキュールが放たれた。
『うはっ』
『ほんきだぁ』
青空を切り裂くようにして放たれたエレキキュールはこちらに迫ってきていた黒点に向かい飛んで、直撃するような軌道だったけど黒点はぱっといくつもに別れて散開。距離があるとはいえエレキキュールを楽々と躱していた。
「きゅ、きゅ、きゅ、きゅう!」
別れた黒点は精霊さんに匹敵するような空中機動を見せて立て続けに放たれるエレキキュールを躱す。
『はやーい』
『やるぅ』
『なかなかぁ』
「そうですね。あれなんなの?」
凄まじい速さでこちらに迫る黒点は全部で十。徐々に大きくはなっているけどなにかわからない。
『たぶん』
『わいばーん?』
『ひとになつくしー』
「ワイバーン? 小ちゃいドラゴンですよね」
『ちがうけどそうだよ』
なるほど。同じドラゴンだからフィズが珍しく敵意満載なわけだ。
ようやく姿が見える距離まできたワイバーンは子供のフィズとは違い、立派な体格をしていて、背に鞍を装備してそこには鎧を着込んだ騎士みたいな人を乗せてた。
あんな重そうな物着て乗ったらワイバーンが大変だろうなぁと考えていたけど重さなど感じないかのようにワイバーンは咆哮を上げて空を飛びこちらに向かって距離を詰めてきてる。
「きゅぅぅぅぅぅ!」
フィズも負けじと咆哮を上げ、翼をはためかせ速度を上げるとワイバーンに向かって突っ込んでいった。
『あ……』
『いっちゃった』
そして始まる空中戦。
途切れることのない爆発音が空に鳴り響き始めた。
フィズ、なにが君をそこまで駆り立てるのか私には全然わからないよ……
「あれ、帝国からの迎えだったりしないよね?」
『えー』
『そのかのうせいは』
『わからなーい』
ですよね…… ま、いっか。
私は空を歩きながらそんな事を考えるのだった。
◇
「陛下、迎えに出したワイバーン騎士団が交戦状態に入ったと報告が……」
「迎えにいったんだよね⁉︎」