エルフ、出発する
「よし、準備できた?」
『『『おー』』』
「きゅー」
とりあえず、空飛ぶブーツと空飛ぶ絨毯の二つをダンジョンコアの力で作り、空を飛ぶ練習と出かける準備をすること二日。
帝国に遊びに行くと言うと精霊さん達とフィズも行きたいと言う事なので連れていく事にした。
帝国の場所なんて精霊さんもわからないからエルフのアンとトロワも一緒だ。
私一人で行ったら永遠に辿り着けない気がするし。
イーリンスとフェルコーネはお留守番らしい。
というかフェルコーネの存在感の無さが凄い。いつもよくわからない場所で寝てるし。昼寝の聖獣なんじゃないだろうか?
『くれぐれも帝国を吹き飛ばさないようにね!』
「一体どんな状況になれば吹き飛ぶの?」
『いーりんすしんぱいしすぎ』
『ぼくたちがついてるのにねー』
いや、精霊さん。あなた達がいるからこそイーリンスは心配してるんだと思うけどね?
『仮に吹き飛ばすにしても精霊樹に被害が出るような事はやめなさいよ!』
何気に酷いことを言われてる気がする……
というか帝国が吹き飛ぶ事は確定してるんだね。
いや、確かに帝国がどれくらいの大きさかはわからないけど精霊さんとフィズがいたら大体の国は吹き飛ぶんじゃないかな?
ついでに今の私には精霊さんが自信作!とか言って渡された物もあるわけだし。
「イーリンスは本当に行かなくていいの?」
『大精霊になるためにも私はここで精霊樹から魔力を集めときたいしね。あと騒がしいとこは嫌いなのよ』
いや、ここも結構騒がしいからね?
何人かの精霊さんは私についてくるみたいだけどそれでも精霊樹の側にはかなりの数の精霊さんが居残る訳だし。
『あなたが行けばとりあえずは仕事はなくなるわけだしね。あ、絶対にアンとトロワは危険に晒しちゃダメよ? あなたと違ってただのエルフなんだから』
「いや、私もただのエルフなんですけど……」
そう言うと荷物を背負っているアンとトロワが残像が見えるくらいの速度で顔を振ってます。いや、そこまで否定しなくても……
『だいじょーぶ』
『あんととろわにも』
『せいれいじるしのまどうぐをわたしといた!』
「し、信用してもいいのかな? アン」
「……トロワ、疑ったらキリがありませんよ」
不安そうな顔をしたトロワがアンに聞いてますがアンの方はなんだか諦めたような表情を浮かべてるのは気のせいかな?
精霊さん達がさっきいそいそと渡してたのはそれだったんですね。
精霊さん達が渡したのがまともな防御アイテムであることを祈るばかりです。
自爆用魔導具だったら冗談ではすみませんし。私も巻き込まれるし。
「ま、即死じゃなかったらエルフ印のポーションもありますから死にはしませんよ?」
「イルゼ様、私たち帝国に行くだけですよね⁉︎ そんな死活問題が発生するんですか⁉︎」
「さあ?」
トロワが目にも留まらぬ速さで私へと距離を詰めて私の肩を掴んで揺さぶってきます。
うわ、眼が本気です。
「多分、だいじょーぶ?」
「なんか棒読みです! しかも疑問系! 怖い!」
気にしたら負けですよ。
私はトロワの肩を軽く叩いて空飛ぶ絨毯へ向かうのでした。