エルフ、潰される
ソラウが精霊界に拘束されて一週間が経った。
だからといっても私の生活が激変するわけでもない。
強いて言うならソラウがいた時よりも煩くなった。
細かく言えば精霊さん達がはっちゃけてた。
『ぼうくんがいないぞー』
『あそびどきだぞー』
『きんしされてたあれためそう!』
『『『わーい』』』
城の中を精霊さん達が暴れ回ってたりする。
そんな精霊さん達が暴れる度合いが高まるとそれに対応するようにイーリンスの怒声も大きくなってたりする。さらにそれにアンとトロワも巻き込まれてたりするから大変騒がしい。
そんな中でフィズとフェルコーネはというとまったりとマイペースに過ごしてるし。
たまに外で暴れては火柱や氷柱が上がってたりする。
そして私はというと……
「できた」
自分の部屋で魔法を作っていた。
いや、だってね?
ここ数日、ソラウが居なくなってからの精霊さん達のはしゃぎっぷりが酷すぎる。
とにかく煩い。
一日中寝ていたい私がここ数日は一日八時間くらいしか寝れてない。寝不足になりそうだよ!
というわけで私の安眠のために私は自分の持てる技量を全力で使う!
「これを使えば安眠間違いなし」
精霊樹のおかげで無駄に増えた魔力をふんだんに使った新しい魔法。
その名も安眠魔法!
これは風の結界を作る魔法。効果は周りの音を完全に風の壁により遮断し、さらには結界内の温度を睡眠を取るのに最適な温度に調節してくれるという私渾身の魔法!
作るのに五日くらい掛かったし。
「よし、さっそく使うぞ」
掌へと魔力を集めて魔法を発動。幾つもの小さな魔法陣が重なり、煌めいていく。
おお、これは上手くいきそう!
でもこれすごく魔力使うなぁ。
ひたすらに魔力を流し続けてないと魔法陣が完成しないみたいだし。ま、魔力はあるから時間が掛かっても大丈夫だけどね。
ワクワクとした様子で魔法陣が起動するのを待っていると私の部屋の扉を吹き飛ばすような勢いで、というか吹き飛ばして精霊さんが入ってきた。
『みているぜ! あたらしくつくったせいれいぶぐ!』
「ふーん」
もう扉を壊されてもなにも思わないよ。
勝手に直るとはいえ精霊さん達にはノックという概念を教えても次の日には忘れてるし。
そんな精霊さんの手にあるのは金色に輝く小さな短剣。
そしてそれを目にした瞬間、凄まじく嫌な予感が頭をよぎった。
『あ、ちょうどいい!』
精霊さんの視線が私の手元にある安眠魔法の魔法陣へと向けられていた。
何が丁度いいの⁉︎
「何する……」
『このたんけんね! まほうきれるんだよ!』
ニコニコと笑いながら精霊さんが手にしている短剣を振り上げてきます。
な、なんて恐ろしい物を作ってるんですか!
しかも明らかに私の渾身の作品である安眠魔法の魔法陣を狙ってます!
『だからそのまほうきらして!』
「だめです! 私の安眠が掛かってるんですから!」
私が魔法陣を精霊さん達の手から守るべく高く上げて遠ざけた。
『てい』
しかし、そんな私の努力を嘲笑うかのように空を飛びながら近づいてきた精霊さんの手にしてた短剣が僅かに魔法陣へ触れ、何かが砕けるような音が響いた。
「あぁ⁉︎」
短剣が触れた魔法陣は一瞬にして砕け散ると私の頭上から魔法陣だった物が、唯の無害な魔力となって煌きながら頭上から降り注いでいた。
『みた⁉︎ まほうにふれただけでまほうがくだけるんだよ!』
『はつどうまえでもはつどうごでもだいじょうぶ!』
『まさにさいきょうへいき』
なんか精霊さん達が笑ってる。
私の努力を潰したくせに……
「なにわらってるのぁぁぁぁぁぁぁ!」
『『『『ピィ⁉︎』』』』
怒りのままに声を荒げた私を見て精霊さん達は悲鳴を上げていた。