魔王、待つことにする
時は少し戻る。
「き、消えた?」
「うん、消えた」
私とサロメディスが肩に乗るフォートレススケルトンに向かってとんでもない魔力を放とうとしていたソラウがいきなり魔力と共に姿を消した。
いや、私の目には瞬く間にソラウの全身を金色の鎖が縛り上げた後に、足元に空いた穴に引き摺り込まれたように見えた。
「し、周囲を警戒しなさい! 隠れてるかもしれないわ!」
サロメディスが操るスケルトンや魔族なんかに指示を出してる。
私は指に付いたフルーツタルトの食べカスを舐めていたけど。
なくなっちゃった。ちょっと悲しくなってサロメディスの方を見ると何故か顔を赤くしながらまたどこからか新しいケーキを取り出して私にくれた。わーい。
『わわ、そらうさままけちゃった?』
『だったらにげよう!』
『せきにんはそらうさまにおってもらうかたちで』
『『『いぎなし!』』』
ケーキを食べながら声の聞こえた方へと視線を向けるとソラウと共に城とかスケルトンに向かって攻撃していた精霊さん達も一斉に退却を開始してる。
もっと一緒に遊びたかったのに……
「サロメディス」
フォートレススケルトンの肩から飛び降りた私は地面を砕きながら着地し、サロメディスへと声を掛けた。
「はい! どうしました魔王様」
なんでかサロメディスはめちゃくちゃ嬉しそうだった。なんでだろう?
ちょっと首を傾げながら考えるけど全くわからない。
「私、アレ追いかけるけど?」
私が指差すのは魔力を全開にして凄いスピードで遠ざかっていく精霊さん達だ。かなり速いけど今の距離位ならば私の脚なら軽く追いつける。
「い、いけません! あの精霊達が戻る先には更に凶悪なエルフがいるはずです!」
「ふーん」
サロメディスが慌てたようにフォートレススケルトンの肩から飛び降りてきてわたしの腕を掴んだ。
凶悪なエルフ…… ソラウが言ってたイルゼとかいう人かな。
「でも私もっと精霊さんと遊びたいし……」
「悲しそうな顔もまた可愛いぃ……んん! なにも行くなと言ってるわけではありません! 魔王軍を再編成して準備を整えてから世界樹を奪取しに参りましょう!」
世界樹……
ああ、精霊さん達が住んでる場所かぁ。
「どれくらいで準備できるの?」
できるなら直ぐに遊びに行きたい。
私一人ならすぐに行けるし。でも行こうとしたらサロメディスが絶対邪魔してきそうだし、相手にしてたら精霊さん達は絶対姿を見失いそう。
だったら場所がわかってるサロメディスに案内させたほうがいいのかもしれない。
「い、三ヶ月ほどで魔王軍を再編成をしてみせます」
「じゃ、それでいいよ」
三ヶ月ってどれくらいの長さかわからないけど。ちょっとくらいは待ってあげよう。
楽しみはあとに残しといたほうがいいしね。