大精霊、解き放つ
『なんじゃこの骨⁉︎ 魔法を弾きよる!』
『そーらーうさーまー!』
『こっちこないでよー!』
飛んできた骨に向かって魔法をぶち込んだんじゃが骨は僅かに減速するだけで地面に突き刺さっとる。
我が逃げた先にいた精霊達が悲鳴を上げながら逃げ惑う。
そんなこと言っても何処に逃げても貴様らがおるから仕方なかろう⁉︎
我が逃げ惑う間にサロメディスとやらが巨大スケルトンの肩の上で何やら大きなものを何処からか取り出した瞬間、シャオの目にハートマークが浮かんだんじゃが⁉︎
次に魅力されたかのようにフラフラと覚束ない足取りで巨大スケルトンへと近づいていく。
なんか我が追われとる間に魔王の奴が買収されとるんじゃが⁉︎ いや、元から魔王軍なわけじゃから買収も何もないんじゃがな!
シャオが自分の方に向かってきているのを確認したサロメディスの奴は安心したような表情を浮かべると、フォートレススケルトンを操ったのかフォートレススケルトンは片膝を突き、我に骨を飛ばしておらん方の手をシャオの前へと差し出した。
そこに当たり前のようにシャオが腰掛けるとゆっくりと立ち上がり、シャオの座る手をサロメディスのいる肩へと近づけてゆくとシャオが飛び移り、サロメディスの手にあったフルーツタルトとやらに齧りついておった。
あれ、おいしそうじゃのう…… よく見える我の眼には色とりどりのフルーツが載ったお菓子がよく見える。
勝ったらあれも奪ってやるのじゃ。
『そらうさま、やばいよ』
『まほうぜんぜんきかない!』
我みたいに逃げていない精霊達がフォートレススケルトンとやらに魔法による攻撃を仕掛けているようじゃが効果はあまり良くない。
というか効いておらん。
城壁から湧き出す普通のスケルトンならば多少、効果は下がっても魔法によるダメージは通っておるようなんじゃがあのフォートレススケルトンとやらは全く魔法を受け付けておらん。
『ええい! 鬱陶しいわ!』
飛んでくる骨を宙を飛び躱し、体を反転させる事でフォートレススケルトンへと向き直った我は両手をフォートレススケルトンへと向ける。
そして瞬時に魔力を練り上げ、
『フリージングノヴァ!』
我の使う魔法の中でも最強の位置に分類する魔法を若干の手加減をして半分程の力で解き放つ。
手加減したとはいえフリージングノヴァは属性の相性が良ければエンシェントドラゴンすら一撃で氷の彫像へと姿を変えさせることができる。
まあ、あくまでも全力ならばじゃがな。
大精霊たる我が許可なく全力なんぞをだしたら大精霊法案に引っかかるからのう。
あれ、引っかかると凄まじく面倒じゃし。
さすがにこの一撃ならこのスケルトンもイチコロじゃろ!
放たれた青白い閃光は動きの鈍いフォートレススケルトンは避ける事も出来ずに腕へと直撃。
そうして直撃した場所から瞬時に全身を凍りつかせていくはずじゃ。
じゃが、フリージングノヴァが直撃しているにも関わらずスケルトンは凍りつく様子を見せない。
『な、なんで効かんのじゃ?』
フリージングノヴァが直撃した場所は僅かに白くなり凍結はしておる。
周りも気温が下がったからか白くなってはおるから瞬間冷却が不発ということもないはずじゃ。
「ふっふふふ、この私が!ただの魔法特化の大きなスケルトンを作るわけないわ! ぶえっくしゅん!」
フォートレススケルトンの肩に立つサロメディスが体を震わせてくしゃみをしながらも自信満々に言ってきよる。
むぅ、スケルトンには効かんようじゃが、作り出した本人には効くようじゃない。
「タルト、おいしい」
横の魔王には全く効いとらんがのう! いや、効いておるがお菓子に夢中じゃ! 鼻水を垂らしながら食べとるし。
しかし、まいったのう。
このフォートレススケルトン、魔法による耐性が半端じゃないのう。
となれば物理で殴るしかないわけなんじゃが……
『我の籠手が魔法判定受けたら我の攻撃手段がなくなるしのぅ』
我の籠手は我の氷の魔力から作られるすぺしゃるなやつじゃ。じゃが魔力で構成されとるから魔法とあのスケルトンに認識されるとスケルトンを殴りつけた瞬間に霧散しそうじゃし。
『うーむ、どうしたものかのぅ』
再び骨を飛ばそうとし指をこちらに向けるフォートレススケルトンを見て我は思案するのじゃった。