大精霊、間抜け顔を晒す
もう体のあちこちに衝撃が走るものじゃから何処から攻撃されとるかまるでわからん。
立て続けに繰り出される攻撃は打撃であったり斬撃であったり魔法であったりと様々じゃがどれ一つとして我の氷の鎧を貫く事は出来ておらぬ。
じゃが衝撃だけは伝わってくるのでノーダメージではあるのじゃが不快ではあるわな。
『そらうさま』
『あたらしいあそび?』
我が全くやり返していないのを見て周りで城攻めという名の遊びをしていた精霊達も興味を持ったのか近づいてきよる。
『遊びと言えば遊びじゃのう』
効果がない攻撃、いやストレスが溜まるから効果がないわけではないか、そんな攻撃をひたすらに喰らっとるわけじゃしな。
『お主らこそどうしたんじゃ? 城攻めはどうした?』
こやつらなら飽きたとか言いそうじゃな。
『うーん、せめてるけど』
『まほうきかないのがいるの』
『ぞろぞろじゃまー』
精霊達が指差す方へと目を向ければ、大量のスケルトンが武器を構えて壁のあちこちから飛び降りてきよるとこじゃった。
『あれは魔法の効かんスケルトンか』
いや、実際には効きにくいかのう。
なんか以前、森に攻めてきた奴が作っておった気がするのう。
あの時は一体だけじゃったが今回はめちゃくちゃ多いのう。さすがは本拠地と言うべきか。
そんなスケルトンに向かって精霊達が爆音を途切れさす事なく魔法を叩き込んでおるがスケルトン達は一向に怯む事なくこちらに向かって直進してきておる。
どうしたものかと腕を組んで考え込んでおると今度はそれなりにデカい衝撃が頭にぶち込まれたので僅かに体がよろめく。
「この! こいつなんで効かないんだ!」
『邪魔じゃのう……』
懲りずに攻撃を仕掛けてくる魔人がおそらくは居るであろう方向へと我は呆れたような目を向ける。
『とりあえず!』
『たおせるやつからやる!』
我の周りを飛んでおった精霊達が新たな獲物を見つけたとばかりに我に攻撃を繰り出しておった魔人に、というか場所がわからないようじゃから周りに向かって魔法を適当に放つ。
それに気付いたらしい魔人はというとおそらくは手にした武器と尻尾を駆使したんじゃろうな。精霊達の魔法が不自然に軌道が曲がったりしておるからのう。何発かは躱すなりなんなりしてるようじゃが。
「小ちゃいくせに!」
『さべつはつげん!』
『せいれいはちいさくてかわいいのです!』
『ぎるてぃ!』
『ちょっとながいきしたきつねなだけのくせに!』
攻撃を仕掛けてこない我よりも攻撃をしてくる精霊達の方が脅威と感じたのか魔人の意識が精霊達へと向けられておるみたいじゃな。
『まあまあ強いのう』
精霊達の攻撃を躱しながらも反撃してるようじゃ。たまに精霊達が吹き飛んどるし。
そう考えながら精霊達が手こずる魔法が効きにくいスケルトンに向けて掌をかざし魔力を放ちながら我も参戦しようとする。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
その瞬間、巨大な雄叫びと共に地面が大きく揺れた。
「なに?」
『な、なんじゃ?』
獅子族と相対していたシャオも疑問に思ったらしく同じ問いを発しておった。
そんなシャオの意識が別のものに向かった僅かな隙を見逃さずに獅子族の奴はさっさと後退しよったようじゃがシャオの奴は全く意に介さず、城の方を見上げて口を開けて間抜けな面を晒しておった。
『なんじゃという……のじゃ……』
我も釣られて同じように城へと視線を向け、続けてシャオ同様に口を大きく開けて間抜け面を晒した事じゃろう。
『わー』
『でっかい!』
『かいじゅうだ!』
精霊達が楽しそうに喚いとる。
そんな我や精霊達の視線の先には城壁を跨ぐようにして姿を現した鎧を着込んだ巨大な漆黒のスケルトンの姿があった。