魔王、ぶっ放す
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『魔砲か、聞いた事はあったがあれがそうなのかのぅ』
「魔法の弓矢より長距離から魔法を撃てる。重くて動かすのがすごく大変らしいけど」
確かサロメディスがそんなこと言ってた気がする。
まあ、魔砲も私には決定打にはならないから適当に聞いてたけど。飛んできた魔法は殴ったらいいし。
『そらうさまー』
『なんかつっこんでくるー』
精霊さん達の間延びした報告を確かめるべく、そちらを見れば軽装鎧を見に纏った獣人が魔砲の着弾で生じた煙に紛れ、その身体能力を充分に発揮しながらこちらに距離を詰めてきている所のようだ。
『早く迎撃せんと攻撃をくらうぞ?』
『せっきんせんだー』
『ぶきかまえー』
手を出す気がなさそうなソラウの声に精霊さん達はハッとしたようにいそいそと背負っていたリュックから明らかにサイズが大きい剣や槍といった接近戦用の武器を構え、楽しそうな声を上げて突撃していった。
そしてすぐに上がるのは剣戟の音ではなく爆音だった。
『それぇ!』
『そりゃぁ!』
『げんけいなくなるまできる!』
精霊さん達の持つ武器が振るわれるたびに武器が輝き、次いで爆発したり、土が割れたり、燃えたりと様々な現象が引き起こされるため突っ込んで来た魔王軍もそう簡単には進めない。
そこを何とか突破しても後ろに控えてろけっとらんちゃーを嬉々として構えている精霊さん達に攻撃されるため進軍する事ができないようだ。
それは精霊さん達も同じようでひたすらに攻めてくる獣人や魔族のせいで全く進んでいない。
どちらも一進一退の攻防を繰り広げているようだ。
「ソラウはいかないの?」
『我がいくとすぐに決着がつくしのぅ。それにでかい魔力の塊がこっちに向かってきよるしそれを待っとるとこじゃ』
「ふーん」
ソラウがなにを待ってるかわからないけど退屈なので私は精霊さん達が魔法を込めてくれたろけっとらんちゃーを構えて、戦場のど真ん中に魔法を叩き込む。
「ギャァァァァァァァァ!」
『うきゃぁぁぁぁぁぉぁ!』
獣人も精霊さん達も区別なく巻き込んでは馬鹿でかい火柱を上げていく。ついでに悲鳴も。
『よ、容赦ないのう』
「さっき魔砲で巻き込まれた精霊さんは精霊界に帰ったって言ってたから問題ないかなと」
なぜかソラウがめちゃくちゃ引いてた。
味方を陽動としての攻撃は楽なはず。
サロメディスのスケルトンやゾンビなんかは大規模魔法で巻き込む前提で動かしてたりするし。
『イルゼの奴は天然で巻き込むが、こっちは意図的じゃな。エルフって本当に変な奴ばかりじゃのう』
そのイルゼって人がわからないけど。ソラウの言い方からして嫌ってる感じではなさそうね。
ぼんやり考えながらも精霊さんが魔法を込め終わったろけっとらんちゃーを次から次へと乱射していく。
次々に上がる火柱のせいで最早、ここは戦場ではなく火事の現場にしか見えないよ。
カチ
「ギャァァァァァァァァ!」
私が引き金を引くたびに精霊さんや獣人の悲鳴が上がる。なるべく精霊さんを巻き込まないように狙いをつけているから大きさで言えば獣人や魔族の悲鳴の方が大きい。
これは楽しい。すごく楽しい。
魔法なんて身体強化以外はほぼ使えない私としては魔法を使うという行為そのものが楽しいもの。
『味方の精霊と一応自分の部下であるはずの者を躊躇わずに巻き込んどるし、こやつやばい奴なのでは?』
ソラウがなんか呟いてたけど私の視線は火柱の中から飛び出してきた巨大な獣人に注がれていたのだった。