精霊、ふぁいやーする
『よし、開戦じゃ!』
きっちり一時間。
我の魔力で作り出した氷の時計が音を鳴らして時間を伝えてきた。
その音を聞いて今まで遊びまわっていた精霊達がハッとしたような顔をしながら慌てたように動き回っていた。
こやつら、一時間後に攻めるという事を完全に忘れて遊んでおったな……
『こうげきこうげきー』
『かいしー』
『とつげきだぁ!』
精霊達が様々な武器を手にしたまま凄い速度で壁へと向かい飛んでいく。
手にしている武器は光り輝く剣であったり槍であったりと様々じゃな。
勿論、精霊が手にしているのが唯の光オプション付きの武器なわけがない。
精霊の魔力という加護を受けた武具は普通の武具などを遥かに超える性能を持っとるからのう。
名付けるならば精霊武器と言った物じゃろうか。
正直、あのレベルの精霊武器なら軽く振るだけで鋼鉄の壁に傷くらいはできるじゃろうしな。
『えんきょりもやるよー』
『まほうれんしゃ!』
『いっぽうてきにこうげきだぁ』
そして後方に待機していた精霊達もまた動き出した。
突撃して行った精霊達とは違い、こちらは杖を持っていたり、なんか太くて長い筒みたいのを肩に担いでおるんじゃが……杖はわかるんじゃがあの筒は一体なんじゃ?
『まほうはっしゃぁ!』
『もやしつくせぇ!』
首を傾げながら見ていると杖を持つ精霊達が一斉に魔法を放った。
様々な属性の魔法が放物線を描きながら宙を飛び、突撃していく精霊達を追い越しては次々に壁へとぶつかっていき爆音を鳴り響かし煙を上げさせた。
『ふーむ。最低限の防御はあるようじゃな』
『む、やぶれなかった?』
魔法を放ったらしい精霊達の不満気な声が耳に入る。
まあ、当然じゃろな。よく見るとあの壁、というか上空まで魔力の壁みたいな物が張られとるし。しかもかなり強力なやつじゃな。
突撃して行った精霊達の持つ精霊武器でも普通の壁なら容易く壊せるじゃろうがあれはなかなか壊せないらしくギャーギャーと叫きながら魔力壁に武器をぶつけとる。
『じゃ、我もそろそろ参戦を……』
『そこは!』
『すこし!』
『まってください!』
魔力で我愛用の氷の籠手を作り上げていると背後から待ったの声が掛かった。
振り返るとなにやら太い筒を持っている精霊達がいた。
『なんじゃ?』
『ぼくたちまだこうげきしてないし』
『そらうさまがいったらでばんがなくなる!』
いや、まあ、そうじゃけどな。
『そもそもその筒はなんじゃ? 後ろにおるということは遠距離攻撃用の武器じゃろっと!』
話している最中に壁の上から爆音が鳴り、こちら側に向かって巨大な魔法が飛んできたのを籠手を装備した腕で殴り付けて吹き飛ばす。
あれは魔砲か。なかなかいい武器をだしてきたのう。
まあ、脅威ではないわけじゃから今は精霊達が持つ太くて長い筒じゃ。
近距離で使う武器ならば突撃しとる精霊達と一緒に行っとるはずじゃしな。
『ふっふっふ』
『いせかいでみたぶきをつくってみたのです』
『ほほう、異世界の!』
そう言われると俄然興味が湧くのう!
我ら精霊はと言っても大精霊や高位精霊は無理じゃが条件さえ整えばこの世界とは違う世界へと行くことが出来る。無論、その条件というのは簡単な物ではないのじゃが、異世界を見た精霊というのは総じて一つ飛び抜けた精霊になる事が多い。
そうした精霊こそが高位の精霊になり、同時に異世界の力を取り入れた新たな魔法を作り上げたりするわけなんじゃがな。
『これぞいせかいのぶき! ろけっとらんちゃー』
精霊達が筒を肩に担ぐようにし、筒の先を魔力壁へと向けると、
『ふぁいやー』
『ふぎゃぁ⁉︎』
すっごい笑顔でぶっ放して、筒の後ろから生じた衝撃波が我に打ち当たり、我は悲鳴を上げて後ろへと吹き飛んだ。