大精霊、追いつく
『やっと追い付いたぞ』
精霊達の魔力の痕跡を追いかけて早三日。
ようやく精霊達の姿が目に入る距離まで追いつく事ができた。
『うーん、どうしよ?』
『なかはいれちゃったね』
『ひぜめする?』
ようやく追い付いた精霊達はというと何やら集まり会議らしきものをしておる。
『何しとるんじゃ、お前ら』
そんな精霊達の背後から声をかけた。
なんかどう攻めるか話しとるみたいじゃったが。
『あ、そらうさま』
『はやかったねー』
『派手にやらかしとったからのう。追うだけなら楽じゃ』
振り返ってきたこやつら、やたらと楽しそうじゃのう。
実際こいつらは魔法を打ちまくっておったからどう進んでいるのかはよくわかった訳じゃから楽しくないわけないんじゃろうなぁ。
森、結構ボロボロじゃったし。
追いつくまで三日くらいは掛かったわけじゃし、その間にどれくらい楽しんだのやら。
改めて考えるとあの森、デカすぎじゃろ。
『それで何を悩んどるんじゃ?』
『てきがみんななかにはいちゃったの』
『なかにせめるかそとからせめるかのきょうぎちゅう』
『なるほどのう』
どっちにしても結果は変わらんと思うのじゃが、おそらくはこやつらの気分によるところが大きいんじゃろ。
『からみてぃ、おいてきたしね』
『いったいくらいもってくればよかったね』
あんなもんが戦いの場に出れば戦闘にすらならん気がするんじゃがな。
というかこのままでは我が暴れる機会が……ん?
なんとなく壁の向こう側の魔力を探ってみるとそれなりに強い魔力反応が五つくらいあるのう。
それも二つは馬鹿みたいにデカイ魔力じゃ。
五つのうち二つはかなり弱っておるのを見ると先程まで精霊達が追いかけ回していた連中じゃろうな。
もう一つは魔力を隠しておるし、あとなんか前に精霊樹に攻めてきた奴の魔力もあるのう。
最後の一つは隠す気がないような魔力量じゃな。
『ふむ、なかなかじゃな』
以前戦った聖剣使いはイマイチじゃったからのう。
このまま精霊達が暴れれば強い奴も出てくるじゃろう。
獲物を横取りするような小粒の奴もおらんし、さらに言えばここは精霊樹がある森じゃない。
つまり手加減する必要がないということじゃ。
久しぶりに我もはっちゃけることができるというわけじゃ!
『だいせいれいはぜんりょくをだしてはいけないんじゃ……』
『まあ、全力は出さんがのう。五分くらいじゃな』
ここには小うるさいイーリンスの奴もおらんからのう。
あとは精霊王にバレなければ問題ないわけじゃが、あの方はおおらかというかイルゼと同じ面倒くさがりじゃからあまり下界には干渉してこんじゃろ。
我と同格の大精霊あたりが文句を言ってきそうじゃが、文句を言いにくる奴には心当たりがあるが、そうそう姿を現さんじゃろ。一応、大精霊じゃし。
『よし、やるかのう』
『いるぜおこらない?』
『やりすぎたらおこるんじゃないかなぁ?』
『ぜったいいーりんすはおこるよ』
なんじゃなんじゃ。今までやる気満々じゃったじゃろうが。
ここまできてなんでいきなり弱気なんじゃ。
『そらうさまとちがってぼくらは』
『せんさいで』
『かよわくて』
『まもられるようなそんざいなんです』
いや、それを自分で言うのかのう?
それ以前にその発言に自分で違和感を覚えんのか?
繊細でか弱くて守られるような存在は魔法を笑顔で乱射はせんというのに。
『お主らがやらんのであれば我だけでもやるが?』
『そこはそれ』
『こころにたなを』
『ぼくたちもあばれたーい』
本音がでとるぞ。本音が。
まあ、ガス抜きは必要じゃろう。精霊樹の側ではイルゼは緩いがイーリンスはぎゃあぎゃあとうるさいしの。
『よし、やるぞ。とりあえずは声明だすんじゃ』
『『『あいあいさー』』』
我の提案に精霊達は楽しそうに返事をすると実行すべく動き出したのじゃった。