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精霊樹のエルフは働かない  作者: るーるー
精霊進行編
122/429

筋肉、凹む

 

「むぅぅん!」


 大竜刀と巨大な鈍器がぶつかり合うたびに火花が散り、さらには衝撃波が生じる。

 ぶつかった反動で後ろへと地面を抉るようにして下がった俺は額から流れる汗を拭う。


「こいつ、やばくない?」

「大将、こいつ今までの魔獣共とは桁が違いますぜ」


 部下に言われるまでもなくそんなものは俺が今、肌で感じてる。

 目の前にいるのは正真正銘の化け物。

 この魔王軍幹部、豪王ターナトスに匹敵する筋肉パワーを持つ化け物だ。


「知性が有れば俺の軍で活躍できたであろうに!」


 目の前の化け物、漆黒の鎧を纏っている魔獣はまるで騎士と思わせるような佇まいで巨大な鈍器を構えている。

 さて、俺の記憶にはこんな魔獣はないのだが……まあ、俺の事だから忘れているだけかもしれないがな!

 だがなんとなく見たことがあるような気がするんだが、あれは、えーと……


「アロマ!」 

「アルマです。なんです隊長」


 そうだったアルマだった。


「あいつに似たような魔獣がいただろう? あれはなんだった? こう思い出しそうで思い出せないんだが」


 そう告げると武器を構えたままの姿勢で固まっている黒騎士へとアルマは視線を向ける。


「おそらくですが隊長の記憶にあるのはリビングデッド、もしくはリビングアーマーではないでしょうか?」

「おー、それだ。殴ったら一発でひしゃげたやつだな」


 確かリビングアーマーは鎧型の魔獣だった。魔王城周辺に一度大量発生したことがあったがあれは大竜刀を使うまでもなく殴ったら壊れてたが。 


「あんなボロ鎧とは比べ物にならねぇな」


 現に俺の部下、リビングアーマを倒したことがある奴も黒騎士に向かい飛びかかってはいるが黒騎士は悠然とした態度を崩さずに攻撃を軽々と防ぎ、その手に持つ鈍器を振るい吹き飛ばしていく。どいつもそれなりの筋肉なんだがな。

 まあ、当然か。豪王である俺の手が数度の打ち合いで痺れちまうくらいだ。

 それなりの筋肉では太刀打ちできないってもんよ。


「となるとあまり好きじゃねえがドーピングしかねぇな」

「隊長、好き嫌いで物事を決めている場合ではないと思いますが?」


 そうは言うが自分の筋肉じゃないので戦って勝ってもそれは誇れるものじゃないからな。

 だがアルマの言うことももっともだ。

 ならしかたねぇ


筋肉増強マッスルアップ!」


 身体強化魔法、筋肉増強マッスルアップの効果により俺の逞しい筋肉が更なる躍動を開始する。

 身体中の筋肉という筋肉が肥大化する。

 これにより俺の筋肉戦闘力はさっきまでの五倍! 力負けなんてすることはありえん!


「むん!」


 地面を割るほどの踏み込みにより、一瞬にして黒騎士の懐へと滑り込み、


「オラァァァァァ!」


 大竜刀を全力で振り抜いた。

 黒騎士の奴は反応はしているが防御が間に合わず、土手っ腹に大竜刀が叩き込まれる。

 凄まじい音を上げながら黒騎士は周りを囲んでいた部下をも巻き込み木々をへし折りながら飛んでいき、何かにぶつかったのか轟音と共に土煙が舞い上る。


「さすが大将だぜ!」

「ナイス筋肉!」

「俺をその豪腕で抱いてくれぇ!」


 いや、そんなことしたら死ぬと思うがな。

 だが問題はそこじゃない。

 土煙で視界が遮られた場所を睨みながら俺は痺れた手で握る大竜刀へと眼をやる。

 そこには先ほどまでは一切の歪みなどがなかった大竜刀の刃が見事に凹んでいる。

 なんて硬さをしてやがる!


「アルパ」

「アルマです。どうしました隊長?」


 アルマは凹んだ大竜刀には気付かないのか他の部下達と同じように少しばかり興奮したように頬を赤くしている。

 俺に男色の気はないんだが……


「逃げるぞ」

「「「えっ⁉︎」」」


 俺が大竜刀を背中の鞘に戻し、そう告げると全員が絶句し、驚いたような表情を浮かべてやがった。

 おい、なんでそんな意外そうな声を上げてやがる?

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