エルフ、叩き込む
「よかったのじゃぁ…… 本当に契約切られなくてよかったのじゃぁ……」
腰が異常な音を鳴り始めたあたりから私も流石に危機を感じたのでソラウを蹴飛ばして契約は切らない事を伝えるとソラウは氷の涙を流しながら喜んでいた。
そんなに流行りに置いていかれるのが怖かったのかな。
「とりあえずは自然破壊は置いとこう」
凍りついて砕け散った場所はまるで何もなかったかのような空白地帯になってるし。
樹々が再生するまで何年かかるか。
まあ、エルフの一生は長いので私がいきている間には再生されるだろうね。
そんなことより問題は私の寝る場所だよ!
フィズは材料を提供してくれないし、なんかまた本人曰く宝物を集めてるし、ソラウは加減ができないから細かいことに関しては役に立たない。
つまりは竜も精霊も全く役に立ってなくない?
私、召喚主なのに契約したのに全く貢献されてないよ!
「お主は一応魔法が使えるじゃろ?」
「いや、そうだけどさ? なんかそれあなたが言うセリフじゃないよね?」
確かに私は精霊魔法と召喚魔法以外にも普通の魔法が使える。
でも別に得意ってわけじゃないんだよね。
ソラウと同じで私もあまり魔力の細かい制御が出来ないから大雑把な物しか使えない。
「はぁ、仕方ないから私がやるしかないか」
なんだか任せているといつまで経っても終わらない気がするし。
なによりソラウに任せると張り切りすぎて森が無くなる……
つまり、動きたくないけど動かないといけないわけだ。
「はぁ」
ため息をつきながら私は樹へと近づく。
屋根のある建物は必要不可欠、また雨でも降られたらたまらないし。
私は掌へと風の魔力を集め回転させていく。
本当なら斧とか剣が有ればそれに風の魔力を纏わせて斬る力を上げたりすれば良かったんだけど無い物ねだりはしていられない。
集めた風の魔力は徐々に球体の形を取り始め、甲高い音を響かせ、周囲の草木を揺らせる程の風を周りに発している。
「一本切りたいだけだしこれくらいかな?」
そんな出来上がった魔力の塊を私は樹の中心部へと叩きつけた。
叩きつけた部分をあっさりと削り取った風の魔力を樹の中に残したまま私は少し距離を取り、風の魔力を解放させた。
瞬間、森の中に風が吹き荒れる。
吹き荒れた風は樹々を容易く斬り裂き、倒れてくる途中にも更に切断していき運びやすいサイズとなって落ちてくる。
よし、上手くいった。
落ちてくる木片を躱しながら下がる。
そうして巨大な樹は切り裂かれ、周りは手頃な木片で埋め尽くされていた。
「これだけあれば充分だよね、フィズ」
「きゅ!」
流石に大量の樹を運ぶのは疲れるからフィズを頼ることにする。フィズも自分の物を使われるわけではないからか快く了承してくれた。
「わ、我も手伝うのじゃ!」
ついでにソラウも。