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精霊樹のエルフは働かない  作者: るーるー
精霊進行編
119/429

幹部、頭痛に悩む

 

「フッハッハッハ! 打ちまくれ! あと二時間は続けるぞ!」


 呑気に攻撃の指令を出し続ける魔王軍幹部の同僚、ターナトスの姿を見て同じ幹部である私、マカーレフは深々とため息をついた。


 ターナトスは脳筋の幹部だ。

 指令を出せば突撃しか出さない。そんな彼が突撃ではなく魔法の弓矢での、しかもこの森に張られている結界ギリギリからの攻撃を納得させて命令を出させるまでには四時間に及ぶ説得が必要だった。

 これだから頭の悪いのは困るのよ。


 相手は魔王軍幹部の最強であったサロメディスをボコにした相手。油断できるような相手ではない。


 以前、この森を調査しに出たサロメディスがいきなり血塗れで魔王城の結界を突き破り、門に突き刺さったのには恐怖を覚えたわ。


「あんな魔力の塊みたいなサロメディスがボコボコにされたのよ? 普通警戒するものよ」


 サロメディスは確かにドジでくだらないミスをしたりしてたけど戦闘に関しては幹部の誰もが認めている実力を持っていたのよ。

 なにより、殺した相手や死体をゾンビとして下僕にできるなんていう反則に近い死霊魔法と骨を操る魔法を持つサロメディスの実力は魔王軍においては魔王様を除いて一番なんだから。


「ワッハッハッハッハ!」

「サロメディスが負けた相手に脳筋ターナトスと幹部最弱の私の組み合わせで勝てるわけないのに……」


 というより魔王軍の方針としてこの森は様子見にするはずだったのに。

 ターナトスのアホのせいで!

 こいつは自分一人で本気で世界樹を落とせると信じてる。

 さすがに我らが魔王様はそんな事は無理だという事は理解されているようで一応のお目付役で私が付けられている。


『危険なら帰ってきていい』と魔王様は仰ってたし、それに対しての罰はないと明言されてたから私としてはさっさと離れたい。

 ええ、遠距離系の攻撃手段しかない私としてはさっさと逃げ帰りたいのよ!


「ターナトス、これからどうするつもりなのよ」


 私としては帰りたい。

 サロメディスをボコした化け物みたいな奴が姿を現す前に。


「なんだ、お前が遠距離からの攻撃で攻めろというからそうしたんだろう?」


 脳筋のターナトスと言われても恥じない、というか幹部の中では豪王と一、二を争うくらいの無駄な筋肉を見せつけるかのようにターナトスはわざわざ上着を脱ぎ捨ててこちらを見てきた。


「うるさい、暑苦しいからこっち見るな。寄るな」


 無駄な筋肉の塊が側にあるだけで暑苦しい。あと変なポーズ取るな。


「ならば、突撃しかあるまい! なに俺の率いる筋肉の軍団(マッスルパワーズ)に掛かれば世界樹くらい容易く手に入れる事ができるさ!」

「どこからその自信が来るの! 相手はあのサロメディスを撃退した相手なのよ!」

「ふ、そんなことはわかっている。だが俺にはサロメディスにないものがある! それこそが俺の最大の武器だ」


 意外にもバカはバカなりに考えているらしい。


「むん!」


 なぜかまたターナトスは自分の筋肉を誇張するようなポーズを取り、私に見せつけてくる。

 筋肉が無駄に動いて吐きそうよ。


「これが答えだ」

「え、何が?」


 ただポーズを取っただけじゃない。


「わからんのか? サロメディスになく俺にあるもの! それこそがこの筋肉だ!」

「さすがだぜ大将!」

「そうさ、筋肉があればいけるぜ!」


 なぜかターナトスの部下がまるで自分が褒められたかのように喜んでいる。

 いや、意味わからないわ。

 おかしいのは私だけ?

 そう考えた私は背後に控えている自分の部下にこっそりと視線を向ける。

 背後の部下は私同様に呆れたような眼をしてた。いや、何人かの女性の部下は頬を赤らめて視線を逸らしてるけど、それは男の裸の上半身を見たからだと信じたい。


「それじゃ、私は撤収するわ。あとは好きにやりなさいな」

「なんだ、一緒に突撃せんのか?」


 誰がそんな自殺を一緒にするか!

 すでにヤバイ気配がすごい速さでこちらに向かってきてるんだから私はさっさと撤収する。


「私の役割は終えたわよ。補給物資も届けたしあとは好きにしなさいな」


 私が手を叩いて自分の部下に撤収の指示を出し始めた。


「うむ、ならば我らは弓を撃ったまま突撃だ!」

「「合点だ! 大将!」」


 ああ、脳筋はこれだから嫌だ。

 そんな事を考えながら雄叫びを上げながら突撃していくターナトスを見た私は微かに頭痛がするのを感じたのだった。

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