エルフ、動かす
『とりあえずイルゼよ。この攻撃をしてきとる連中の大まかな位置はわかるわけじゃな?』
「まあ、大体ならね」
脳内地図で大体わかる。
といっても本当に森と外の境界線上に布陣してるみたいで赤い点がちらちら入っては範囲外に出るということを繰り返してる。
だから非常に鬱陶しいんだよね。
こう、視界にちらちらと入る感じ?
『じゃったら精霊達にその場所を教えれば終わりじゃな』
「うーん、そううまくいかないんじゃないかな?」
『なんでじゃ?』
いや、だって精霊さん達は迎撃を完璧に遊び感覚でやってるからね? そんな状態の精霊さん達から遊び道具を取り上げたら酷いブーイングが起こるだろうし。
「だから動けるのに動いてもらうよ」
『我はやじゃぞ』
「きゅー」
即座にソラウとフィズが断ってきた。
フィズなんかはお宝があったら行きそうだけど特に目ぼしいものがある気配を感じないのかもしれない。
「大丈夫、二人は当てにしてないから」
『なぜじゃろ、働かなくていいのに負けた気がするのは……』
なぜか打ちひしがられるソラウを無視して私はしばらくの間ほったらかしにしていた存在へと意識を向ける。
うん、繋がりはまだ生きてるから森の何処かにはいるみたい。
脳内地図を意識したら何処にいるかはわかるだろうけど存在していることがわかれば問題ない。
「黒騎士、攻撃してきてるのを潰しといて」
繋がりを通して暫く放っておいた黒騎士に小さく呟き命令する。
その呟きが繋がりを通じて聞こえたのか了承するような気配を感じる。
召喚したものとの繋がりを使って命令したのは初めてだからちゃんと通じてほっとしたよ。
フィズとかソラウなら繋がりを通す前に近くにいるから使うことないし。
以前、ヴィ達を城に招待する時に道の確保を任した黒騎士だったけど、それからは別に剣の姿に戻すことなく一つだけの命令を与えて自由に動いてもらってる。
その命令とは『森で暴れてる魔獣を蹴散らす』という非常にシンプルなもの。
そんなわけで森に住む魔獣達は少しばかり大人しくしていたりする。
なにせ暴れたら黒騎士がその場に現れるし、城にいてもわかるくらいに黒い魔力の柱が上がって魔獣の数が減ってるわけだし? 黒騎士は命令をしっかりと守ってくれてる。
そんな黒騎士に新たな命令をだしたわけだからこれで問題は解決されたも当然だよね?
『黒騎士を動かしたのか?』
「うん、一番手っ取り早く終わるし」
決して私がわざわざ向かって攻撃したりするのが面倒なわけじゃない。
人には適材適所というのがあるんだから!
勿論、私はサボるの担当!
「一時間もしないうちに終わるんじゃない?」
『となると森の一部が消えるんじゃないかのぅ』
そんな事は……多分ないと信じたい。
ちょっと自信がなくなってきた私の耳に黒騎士が発したであろう咆哮が届いた。