精霊、しゅつげきする
そんな飛んでくる手紙をイーリンス任せにした生活をさらに一週間程続けた。
たまにイーリンスが怒鳴りながらやってくるので少し手伝ったりしたけど、ほぼだらだらできるという素晴らしい日々だった。
そう、だったつまりは過去の話。
私は理想的なぐーたら生活を満喫していたわけなんだけど、よくある冒険物のお話のように平和というのは唐突に叩き壊されるものだ。
それは私が大きなベッドで惰眠を貪っている時にやってきた。
「ん?」
『む?』
「きゅ?」
不意に感じた違和感の様なものに私は閉じていた眼を開いた。
私と同じようにだらけていた、いや、ダンジョンコアで自分の担当場所を弄っていたらしいソラウとフィズもまた同様になにか違和感を感じたのか反応を示してる。
私はベッドから体を上げ、フィズは首を伸ばし、ソラウもまた違和感を感じた方を見ていた。
『なんかくるー』
『すごいかずだー』
『これ魔法かなぁ?』
遅れて周りを飛んでいた精霊さん達が気付いた。
何かが飛んでくる。
私の頭の中に浮かぶ地図にもある一定の方向からびっしりと赤い点、すなわち敵意の塊が飛んでくるのがわかったからね。
『げいげきだー』
『しゅつげきだー』
『りょうさんがたからみてぃはっしんだー』
精霊さん達が楽しそうに呟きながら私の部屋から飛び出していく。
というか、精霊兵器カラミティって量産されてたんだ……
『飛んできよるのは魔法、いや、魔法が付与された弓矢じゃな』
「え、弓矢ってこんな飛ばないでしょ……」
脳内地図に浮かぶ赤い点が弓矢だとしたらとんでもない速度だよ。凄い速さで飛んできてるし。いや、この速さで生物が飛んできてもそれはそれで怖いけど……
「きゅ!」
いつの間にかフィズがダンジョンコアを口に加えてた。
それを私に渡してくる。これで何をしろと?
「きゅう!きゅう!」
いや、これは外の様子が見たいんだろなぁ。
なんか早くしろと言わんばかりにダンジョンコアを私に押し付けてくるし。
ため息を一つ吐きながらダンジョンコアを指輪の形へと変え、指にはめると魔鏡を作り出し宙へと浮かべる。
『おぉ、壮観じゃのう』
「きゅう」
映し出された光景を見てソラウとフィズは楽しげに声を上げている。
それにしてもいつもなら隣で同じようにキャッキャと笑っているであろう精霊さん達の姿は見えない。でもそれも魔鏡を動かして目に入ってきた物を見て納得した。
「やりすぎじゃない」
魔鏡に映し出された光景、それはかつてのオリハルコン像、地上に十体のカラミティが列を組んでならんでいる。ヴィなんかが見たら顔を真っ青にしそうな光景だった。