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来客編、裏側 エルフ、真剣に考える

 精霊達に無理やりポーションを飲まされるというハプニングがあったものの、一応は問題なく治癒するという事が分かった事で怪我人達は精霊達のポーションを拒否することはなくなりました。

 そういうわけで怪我人がガンガン治っていきます。


「大丈夫かしら?」

「それってどっちの意味で?」

「……」


 何気なく呟いた言葉にトロワが反応してきました。

 もっとも、私はなんとも答えようがないのですが。


 この場合の大丈夫と言うのは帝国としての立場から考えると陛下の身の安全という意味で捉えられるでしょう。

 ですが、ハイエルフやエンシェントエルフの凄さや強さを寝物語で聞かされていた私達エルフは違います。

 エルフとして大丈夫かというのは陛下ではなく、あのエンシェントエルフのイルゼ様を怒らせていないかどうかです。


 エンシェントエルフを怒らせたらどうなるかわかったものじゃありません。

 御伽噺では天候すら操る力を持つとまで言われてるんです。

 下手をすれば陛下の命どころか世界の危機に陥りかねません。


 幸いと言っていいのかは微妙ですが見ている限りイルゼ様は気に入らないものは壊すなんていう危険な考えではなさそうな方でしたが。


「それにしても凄い魔力だったよね」

「そうですね」


 先ほどの光景を思い出しているらしいとの呟きに私も頷きます。

 あの翡翠色の魔力、風を出したときだけ更に眩く光っていたのでそこ以外はおそらくは無自覚。


 普通に体から発せられる魔力だけでも恐ろしい量なのに子供のようなイルゼ様の体内にどれだけ巨大な魔力があるのか想像もつきません。


「わたし、仕えるなら陛下じゃなくてイルゼ様の方がいいなぁ」

「トロワ?」

「だってエルフの上位種であんなに可愛いのよ? いや、皇帝陛下も可愛いんだけどそれはまた別というか……」


 ああ、なんとなく言いたいことはわかります。

 皇帝陛下はどちらかというと本心を隠すために笑っているような感じがしますし。


「あと、ここにはアレがあるじゃない?」

「ええ、ありますね」


 ため息をつきながらトロワが指差すものへと視線をやります。

 そこには広間を下から上に突き上がるように存在する巨大な木がありました。

 大きさから考えて確実にこの建物を貫通して存在してます。

 この樹、城を貫いてるんでしょうね。


 最初の精霊達のインパクトが強すぎて目に入りませんでしたが、普通この広間で一番に目につくものだったでしょう。


「あれ、世界樹よね……」

「やっぱりトロワもそう思うかしら?」


 世界に数本しかないと言われる世界樹。しかもよく見ると精霊達が周りを飛び回ってます。

 この広間にきてからの妙な安心感や清涼な空気はおそらく世界樹があるせいなんでしょう。

 いや、エルフとしての気質もあるかもしれませんね。


「ここにいるとなんか魔力が満たされてる感じだし、居心地がいいもの」

「精霊があれだけいますからね」


 視線を上へと向けると精霊達が楽しげに追いかけっこをしていた。

 おそらくこんな光景は世界樹ここでしか見れないだろう。

 それほどに精霊達は世界から姿を隠しているんだから。


『えるふ?』

『えるふだー』

『いるぜとかみのいろちがーう』


 世界樹を見上げていた私達に気づいたらしい精霊達が興味を持ったかのように私達へと近づいてくると踊るように周りを回りながら飛んでいる。


「ここってイルゼ様が住んでる所なの?」

『そーだよー』

『いるぜがつくったのー』

『かぐはぼくらのおてせい』


 イェーイと精霊達は楽しそうにハイタッチ。

 この広間のあちこちに無造作に置かれてる家具が全部手作り? 帝国に持って帰ればかなりの値が付きそうな細かな装飾が施されてますけど……


「これは帝国よりこちらに仕えたほうがいいのでは?」


 特に仕事内容に拘ってはいませんが、何よりここには世界樹と危険ではありますがエルフには馴染みが深い森があります。


「まあ、エルフの私らにはお金ってあんまり魅力的なものじゃないしね」

「森では物々交換でしたしね」


 お金も森では使う機会なんてありませんからね。


 あれ? 帝国に仕える必要なくないですか?


「転属願いでも出しましょうかね……」


 ちょっと真剣に考えようかしら。

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