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エルフ、泣きつかれる

 

 普通の精霊が軽々とやることをソラウが同じように行うと規模が大きくなりすぎてやり過ぎる。


 例えば、夏の暑い日に涼しい風を望んだ事があった。

 他の精霊が冷たい風を緩やかに村中に流したのに対してソラウは冷風というのも生温い、木々が凍りつくほどの冷気で村を氷漬けにしかけたんだよね。


 おかげで村で育てていた薬草などは全滅、周囲の木もかなりのダメージを受けてしばらくの間、村はお金を得る手段が無くなってたりする。


 本人的には完璧に善意なんだけど此方にはどう見ても悪意しかないんだよね。無意識だからこそたちが悪い。


「それじゃ、屋根の材料の木が欲しいんだけど……」

「うむ任せろ!」


 やる気に満ち溢れるソラウの姿を見て、私には嫌な予感しかない。

 おもむろにそびえ立つ大木へとソラウは近づいていくと、まるで武器を持っているかのように右手を構えた。するとソラウの右手が徐々に氷に覆われていき、それは僅かな間にソラウの右手は美しい氷の剣へと姿を変えた。


「氷の大剣!」


 なんか技名みたいなのを叫びながらソラウは氷の剣になった右手を振り切る。

 その右手には私が見る限りかなりの量の魔力が込められてるみたいだ。まあ、精霊であるソラウからしたら大した量じゃないのかもしれない。けど普通の人どころか魔力保有量が多いと言われているエルフが見てもゾッとする程の魔力量が込められた刃をみて私の体は無意識に震えていた。

 そんな化け物じみた魔力が込められたソラウの右手が無造作に放たれた。


 振り抜いた先にあるのはどれもが太いというのも生易しいほどの大樹がら並ぶ密林。そこに放たれた氷の刃は太い樹々など存在しないかのように切断していき、音を連鎖させながら倒していく。


「どうじゃ! 我の力だけで充分じゃろ!」


 私へと振り返ったソラウは満面の笑みだ。

 確かにここまでならば問題はなかったんだよ。

 そう、ここまでなら。


「後ろ見たらいいんじゃないかなぁ」

「なぬ?」


 私はため息混じりの呆れた声でソラウの背後を指差し、その指先を追うようにしてソラウも再び前へと視線を戻した。

 そこにあるのは切断された大木、そして凍りついた密林だった。

 ソラウの大きすぎる魔力が樹々を切断するだけで済むわけがない。

 これが風の魔力だったり雷の魔力だったりしたならば結果は違ったんだろうけど、ソラウの属性は氷。それ故に切断しようと吹き飛ばそうと『凍らせる』という副次効果が絶対発生するんだよね。


「い、いや、凍っているだけならまだ材料として使えるはず……」


 声を震わせながらもソラウは凍りついた樹々へと一歩踏み出した瞬間、凍りついていた樹々が音を立てて砕け散った。


 久しぶりに頼りにされたソラウはそんな精霊としての自分の能力を完璧に忘れていたのは今の唖然としている彼女を見れば一目瞭然なわけだけどさ。


「やっぱり普通の精霊の方が加減できてるよね」


 私の何気ない一言にソラウは見てわかるほどに体を震わせ、ゆっくりと私へと振り返る。

 瞳から氷の涙をポロポロと流しながら。


「やだぁ! 我と契約切らないでぇぇ」

「ごふぅ⁉︎」


 ちゃんと見ていたはずのソラウが一瞬にして姿を消すと私の腹へと体当たりをかましてきた。

 フィズもそうだけどなぜそうも私のお腹に向かって体当たりをしてくるかな?

 か弱いエルフである私は死にそうです。


「我だって他の精霊みたいに人界に居たいんじゃぁ! 只でさえ我のような高位の精霊と契約できる奴はそうそうおらんのじゃから!」


 私の腰にしがみつきながらソラウは叫ぶ。

 低位の精霊ならば特に契約などを交わすことなくこの世界と精霊界を自由に行き来することが出来るんだけど、ソラウは高位の精霊らしいのでこの世界に長くいるとそれなりに影響を与える存在なんだよね。

 それをどうやら契約を交わす事と姿を作る時に魔力を抑えれば限りなく影響を少なくできるってソラウは言ってた。


 そもそも高位の精霊と契約できる存在がかなり少ないらしい。

 そういう意味では高位のソラウと契約できる私はソラウにしてみたら絶対に手放せないみたいなんだよね。


「人界に行けない精霊は精霊界では流行に乗り遅れてるって言われるから嫌なのじゃぁ!」

「そんな理由なの⁉︎」


 精霊にも流行とかあったんだ……

 あと徐々に腰を締め付ける力を強くするのはやめて欲しい……

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