エルフ、決定される
「とりあえず、不可侵条約を、結ぼう、おぇぇ」
「神国も、それに同意します、うぇぇ」
「これで、面倒なのはなしね? げぇぇぇ」
竜巻に巻き込まれて拷問に近い、空の散歩を一時間近く強制的に味わった私達は全員が顔を蒼くしながら謁見の間まで戻ってきて不可侵条約を結ぶ事にしました。
レオンさんも顔を蒼くしながらもなんとか立って周囲を警戒しているみたい。
私に突っかかってきたリリィはというとソラウとイーリンスはあえて防御魔法を掛けなかったみたいであっさりと風の刃に切り刻まれて、体を保てなくなったのか精霊界に帰還させられたみたいです。
ソラウとイーリンスはというとこちらも精霊なわけだけど真っ青な様子。
他の竜巻に巻き込まれた精霊さん達も顔色が悪く、いつも騒がしい城の中がかなり静かで違和感がある。
それにしてもダンジョンコアから作り出したこの城は凄い。あれだけの暴風と風の刃を食らっても目立った傷は見られなかったし。
城の周りの樹々は軒並みやられて薙ぎ倒されるか切り裂かれてたというのに。
「不可侵条約を結んだけど、ボクとしてはイルゼとは友好的な関係を築いていきたいんだけど……」
「面倒なので嫌です」
早速、要望を言ってきたけど即座に拒否しておく。だって面倒だし。
ヴィが悲しそうな顔をしていますが嫌なものは嫌です。
「用があるならここまで来てください。私は自分からは行かないと思うので」
『まあ、エルフは基本的に閉鎖的じゃからのぅ。こやつの場合は閉鎖的じゃなくて引きこもりのような気がするが』
いいじゃないですか、引きこもり。
誰にも迷惑をかけていないんですから問題ないでしょう?
「……こんな歩いてるだけで死ぬ可能性のある場所にわざわざ来るとか無理じゃない?」
「だったら来なくていいだけの話ですよ? 私は用事がある時だけ外に出るので問題ないです」
「れ、連絡要員にというかここにいたいと凄い熱意を持って脅し……訴えてくるエルフを置いて行ってもいい?」
「いいですけど、命の保証はありませんよ?」
騎士団レベル、いや、レオンさんは別格として彼らと同じような強さのエルフだとしたらこの精霊樹の側を離れて魔獣に襲われたら即死亡になるだろうしね。
私や精霊さん達がわざわざ守る必要もないわけだし。
ま、精霊さん達に気に入られたら精霊さんが勝手に守ってくれるだろうしね。
しかし、脅される皇帝ってどうなんだろう?
「あとここの名前決めといてね? 不可侵条約を結んだ相手の土地を災害の森と表するわけにはいかないんだからさ」
「えぇ、面倒だなぁ」
あとで精霊さん達に適当に決めておいてもらおう。
こうして帝国、神国、災害の森で不可侵条約とやらが結ばれた。
後に精霊さん達による会議により、災害の森の名前はアヴェイロンに決定されたのでした。