エルフ、結ぶ?
再びやってきた謁見の間。だけどその扉をしっかりと開けずにそっと小さく開けて中を見る
中にはすでにレオンさん、アリス、ヴィは既に席に座っていた。
ああ、やっぱり面倒。帰って寝たい。
『いるぜさいごー』
『びりっけつー』
「競争はしてないからいいんです」
中にいる精霊さんが覗いていた私に気づいて声を掛けてきたのでため息をつきながら中へと入ります。
周りを飛び回り、私を揶揄うように言ってきますが、私は悪くないと思います。だっていつ集まるかとか言ってなかったし。
「ふぁー」
欠伸を噛み殺しながらも私は昨日と同じ王座へと浅く腰掛け、背もたれへと体を預けてだらけた姿勢をとります。
「それでなんの話をします?」
『この森が脅威とかなんとかはなしてたじゃろ』
私の横に移動してきたソラウに言われて思い出す。
ああ、そういえばそうでした。
それで結界の話やら、この災害の森が自然発生した魔法で強化されてるやらなんやらと話をしてましたねぇ。
「じゃ、結界を壊すか、国に消えてもらうかの二択でいいですか?」
「「待って! その二択は酷すぎる!」」
あっさり決まるように選択肢を二つあげたんですが、皇帝と聖女さんは気に入らないようです。
「だって話すの面倒ですし。だったらその話を持ってきてる元凶を叩き潰した方が早いかなぁと思いまして」
「そ、その煩わしさを無くすための話し合いなんだからもう少しこちらにも譲歩してほしいなぁと思うんだけど」
ヴィがこちらの表情を伺うように見てきてるんだけど、めんどくさい。
私の目的はダラダラと過ごす事であって、よくわからない話し合いをする事じゃないんだから。
「そもそもの話、私が同盟やら和平やらを受け入れて何かメリットがあるの?」
『誰もが思ってたことじゃがな』
「きゅう」
ソラウとフィズが同意するように頷いてる。
これは話し合いを始めた時から疑問だったんだよね。
同盟、和平と言って望んでるのは向こう側であって私はそんなのは一切望んでない。
大体、私はめんどくさがりなんだから自分からそんなややこしい話を持っていくわけがない。
「ゆ、友好を強化するとか?」
「そもそもそんな友好的ではなかったはず。というか国があるのを私は知らなかったし」
「神の愛を広めるのよ!」
「私、神とか信じてないので」
『いや、創造神はいるんじゃが……』
ヴィやアリスが色々と言ってくるけどどれもイマイチ。やっぱり同盟とか和平とかいらないよね?
こちらに関りさえしなければみんな幸せなわけだから問題ないはず。
「じゃあ、不可侵条約でも結ぶ?」
ヴィが疲れたような声で提案してきた。
不可侵条約って何?
「互いの国へ侵略行為を行わないっていう約束事さ。別に国に入れないとかそういうのはない。だからそちらは帝国に入れるし、帝国もそちらに入れる。ようは戦争行為の禁止ってことかな」
「なるほど」
なるほどと答えはしたけど実際はよくわかってない。
後でイーリンスにでも聞こう。
『神国ローランドとやらもそれでいいのかのう?』
「そ、そうですね。互いにそれが一番良さそうです。……下手に手を打てば魔獣が来そうですし」
そんな顔を青くしながら言わなくてもいいのに……
魔獣なんて操れないよ。あ、でもソラウとかフィズなら操れるのかなぁ。
意外と細かいことに気付くソラウが私がボーとしている間に色々と話を決めていく。
さすがは大精霊というべきなのか、やっぱり無駄に能力は高いよね。普段はポンコツ残念大精霊なのに。
「じゃ、それで……」
『異議ありです!』
そんな事を考えているとアリスの頭の上に光が集まり、鳥のような形へと変わっていったのだった。