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僕の常識は非常識  作者: デブぽん
5/5

5話 契約

ヤバいよー


なんで、挨拶しただけなのにこんなにこの人は食い付いてくるの?


なんとかして、この女の人から逃げなきゃ。


「いやーすみません。急に挨拶しちゃってー僕は訓練の途中なので失礼します。」


完璧だ、

謝罪をする。

あくまで挨拶しただけである事を伝える。

引き止め辛いように用事がある事もアピールしてる。

これでは引き止める事なんて絶対に…


「ちょっと待ちなさいよ!」


ですよね。


僕は諦めて女の人方を振り返ると、すでに目の前に女の人が立っていた。


(めちゃくちゃこの人足早いな)


「はい、どうかしましたか?」


女の人は俺の肩を両手で掴みながら


「あなた、私の声が聞こえるのよね?」


凄い質問だな。


「そのつもりですけど、何か変な事を言いましたか?」


「いえ、良いのよ。私が興奮し過ぎただけで、あなたは悪くないわ。」


だいぶ普通の会話ができるようになってきたようだ。


「ちなみに私の姿も見えるのよね?どんな風に見えてるの?」


前言撤回、やっぱ普通の会話じゃない。


「えっと…凄く綺麗な人に見えます。」


「えっ、あ、ありがとう。」


綺麗な人と言われたからか、ちょっと照れているみたいだ。


こんなワケの分からない人なのに、照れている姿が可愛いのがちょっと腹立たしい。


「とにかく、あなたは私の姿もしっかり見えて、私の声も聞こえているのよね?」


会話になってるかは若干の不安はありますが、


「そのつもりです。」


「あなた凄いわね。」


と、言い終わるやいなや、女の人は急に僕に顔を近づけると、僕の臭いを嗅いでひと言、


「嫌な臭いもしないしね。」


と、腰に手を当ててドヤ顔をしている。


そもそも、僕はここまで既にかなりの距離を走って汗だくだし、ちょっと前からは冷や汗を何度かかいているのだが、その辺は大丈夫なのだろうか…


「あのー僕、かなり汗臭いと思うので少し離れて貰えると嬉しいんですが?」


「あーごめんね。でもあんた、その歳でそんな事気にするなんて、マセてるわね。」


この女の人、ちょっと苦手かも。


「とりあえず、私も自己紹介ね。私は水の精霊のクレイ。今、臭いを嗅いだのは他の精霊の臭いがしないかを嗅いだのよ。」


これは完全に頭のおかしい女の人に絡まれてるで間違いないはずだ。


ただ、僕の目の事を考慮すると、この女の人の言っている事が正しい可能性も0ではない。


現状では僕には判断がつかない。


僕が考え込んでいると、


「精霊の姿まで正確に観ることができる人間なんていつぶりかしら?そうだ!あなた私と契約しなさい。」


話の流れが早過ぎる気がするが、自称水の精霊はいきなり僕に契約を迫ってきた。


「ちょ、ちょっと待ってください。急に契約だなんて、僕はあなたが本当に精霊なのかも分からないですし無理ですよ。」


契約だなんて危ないワードを知らない人と交わせるわけないでしょ?


しかも、自称精霊とか、危ない人を超えて人ですらなくなってるし!


「大丈夫よ!本来なら、いろいろと交渉して条件について話したりするんだけど、無条件で良いわ。」


仁王立ちのまま、苛立ちを覚えるくらいに凄い得意げに


「私からの条件は、拒否権のみで良いわ。あなたからの頼みことに関して、私に拒否する権利を貰えれば私からの条件は無しで良いわよ。」


と、僕を指差しながら言い放った。


この人、人の話を聞かないタイプだ。


僕がなんとか説得しようと口を開くと、言葉は僕の口から出るより前に、水の精霊を名乗るクレイの口から紡がれた。


「我が名はクレイ、水の精霊にしてこの地の水を守護する者なり、水の精霊クレイと契約者スバルの名において、ここに契りを交わす。契約者…」


クレイと僕を中心にして水色の魔法陣が広がり、クレイの言葉に反応して魔法陣に図形が増え、文字が浮かびあがった。


「スバル、あなたの名前はなんていうの?」


「えっ、僕の名前?なんで急に?これはどういう状況なの?」


「あなたの名前よ。魔法陣の維持が大変なんだから、とにかくあなたのフルネームを名乗りなさい!」


クレイの額に皺がより、苦悶の表情を浮かべる。


僕は混乱しながらも、クレイの表情が段々と険しくなり、苦悶の表情になったのを見て、思わず


「スバル・プレオ」


と名前を叫んだ。


すると、クレイは苦悶の表情を浮かべながらも僕の方を見ると、無理矢理に微笑み


「スバル・プレオ、良い名前ね。」


と呟いた。


クレイが僕に向かって無理矢理微笑んだ、この瞬間のクレイの表情を僕はきっと一生忘れないと思った。


クレイはまた魔法陣の中心に向かって


「水の精霊、クレイ」


「両者の名のもとに、ここに契約を!」


と、言い終わると同時に魔法陣が僕とクレイの間に地面と垂直に浮かびあがった。


僕が魔法陣を見ていると、魔法陣が段々と小さくなりながら顔に近づいてきた。

僕は思考がまとまらず、そのまま立ち尽くしていると、魔法陣が僕の左目の中に入っていった。


僕は意識が急に戻ってくると、慌てて左目に手を当てるも、痛みも違和感もない。


今回の件の張本人であろうクレイの方を見ても、クレイは僕の左目を見て満足そうに頷いただけだった。


僕がクレイに文句と説明を求めようと、クレイに向き直ると、クレイの方から


「やっぱり契約は疲れるわね。ごめんなさい、私寝るから起きたらまた説明するわね。」


と、言い残すとそのまま空気にとけるように消えてしまった。


どうなってんだよこれ。

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