2話 目は視力が全てじゃない
今日の食事はシチューと黒パン。
僕の家では家族全員で夕食を食べるという決まりがあり、今日も家族5人が揃ってからの食事になった。
食事中はそれぞれ今日の出来ごとなんかを話しながら、のんびりと食事をしている。
父は明日が雨だと、「仕事に遅れが出るから明日はなんとか晴れて貰いたい。」と仕事の話をし、母は近所の噂話をし、過保護な妹は僕の世話を焼こうと食事中も僕を気にしている。
祖母はあまり自分から話には参加せずに、僕と一緒に聞き手に回ることが多かった。
父は、明日は晴れて欲しいと言っていたが僕の予想では、明日の天気は雨だ。
何故なら、祖母の肩の辺りを漂っている水の精霊がいつもより機嫌良く動き回っているからだ。
この水の精霊は祖母と契約をしているらしく、よく家の中を漂っているのを見かける精霊の1体で、水色のスライムで出来た二頭身の小人のような外見をしていて、僕はこの精霊を自分の中で勝手にアクアと呼んでいる。
今までの経験からアクアの機嫌が良い時は雨が降る前兆で、アクアの様子を見る限り明日は雨で間違いないだろう。
ちなみに、僕にはかなりハッキリとアクアの姿が見えるのだが、普通の人には姿はおろか、存在すら分からないらしい。
だから、僕がこの世界の常識を知るまで、周囲からは痛い子扱いされるし、僕自身も彼らが精霊だと分かるまでは幽霊やオバケの仲間だと思って避けていた。
祖母や母から魔法について教えてもらった時も、ほかの村人が魔法の話をしている時も精霊の姿や形についての話はなく、伝説や伝承の中でしか精霊の姿について語られてはいなかった。
実際に僕の知る限りでは、村で1番の精霊魔法の使い手である祖母の話でも、基本的に精霊の姿はみる事はできず、一流と言われる精霊魔法の使い手で初めてその存在を感じる程度らしい。
ただ、祖母が水の精霊魔法を使う時にはアクアが祖母の隣で魔素を操っているのが見えるので、アクアは水の精霊で間違いないはずだ。
さらに僕は目がかなり良いらしい。
アクアが魔素を操っているのが見えると言ったけど、これも普通は「魔素」なんかは見えないらしい。
僕も普段は魔素を見る事は出来ないけれど、祖母でも母でも精霊でも、誰かしらが魔素に対して働きかけると、僕にはその魔素が靄のような霧のような感じに見る事ができる。
僕の身近には村一番の魔法の使い手と言われる祖母がいて、実際に祖母が魔法を使うところを見る機会が多い僕からすると、魔法を使っている祖母はカッコいい。
そして、やっぱり男として強さに対して憧れがあって自分も祖母みたいに魔法を使ってみたいという気持ちがあるわけで、僕なにりに自分の長所である目を活かして、祖母や母ご魔法を使うところを観察していたわけだが、その結果について報告しよう。
ちなみに村では子供に生活に必要不可欠な魔法と、自衛のための武器の取り扱いを教えるのは10歳になってから、という決まりがあり、僕も間もなく魔法と剣を教えて貰えるようになるはずだが、今はどちらも教えて貰えてない状態なので、魔法については僕の予想も含まれてるからそのつもりで聞いて欲しい。